ひとつの沿線に住み続けることで色々なサービスが受けられる
関東圏の私鉄は、鉄道以外にも地域住民に多くのサービスを提供している。スーパーマーケットやクレジットカードなど、生活に必要なものだけではなく、賃貸不動産の紹介や提供、分譲不動産の販売、さらには子育て関連だけでなくその他もろもろのサービスを手がけている。
こういったサービスを享受すると、非常に効率がいいというメリットがある。鉄道会社系列のポイントも多く貯めることができる。なかには、電気やケーブルテレビまで提供される沿線もある。
生活のすべてが鉄道会社丸抱えになると困ること
ただ、生活のすべてが鉄道会社丸抱えになると、個人の主体的な意志での選択をするという能力がはぐくまれなくなる危険性もある。よいものは何もかも自社沿線にあるのだから、それ以上いいものを、あるいは違うものを探さなくてもいいという考えになってしまう。消費や生活の諸活動において、みずからの探究心をはぐくむ機会を失ってしまうということもあり得るのだ。
いいものを買うのならば、鉄道会社系列の百貨店だけではなく、呉服店に起源を持つ百貨店も見て比較してみようといったことや、さまざまなお店を比較検討して最良のものを見つけよう、という探究心が薄れてしまったり、鉄道系のスーパーマーケット以外にも、どこにいいスーパーマーケットがあり、あるいはどこが安いかということも、考えなくなってしまう。良質なサービスが鉄道会社グループにより提供されると、ものを見る力や考える力というのが、いまいち身につきにくくなるということもあるのだ。
生活する環境が快適すぎるあまり、他を見る視点を失ってしまう――これが「沿線格差」の負の側面であるといえるだろう。