大手術終了3日後からトレーニング再開

2020年10月21日に肝臓と胆管の切除手術。12時間以上かかる大手術でした。

一人の人間の周囲に執刀医、麻酔医をはじめとした何人ものスタッフがつきそい、12~13時間という長い時間をかけて手術を成功まで導いてくれたのです。主治医の先生やスタッフの皆さんにはいくら感謝してもしきれません。

術後2日目までは集中治療室。その後病室に戻ると直ちに、全身にチューブを9本つけたまま、ベッドから立ち上がって、また腰を下ろすという「イスから立つだけスロースクワット」を始めました。最近の臨床研究では、術後もできるだけベッドに寝ている時間が少ないほうがよいとされているそうです。

診療所の空のベッド
写真=iStock.com/LightFieldStudios
※写真はイメージです

術前、術後の筋トレのかいもあって、11月7日に退院。術後、これほど短期のうちに退院できる例はまれだそうです。横隔膜の上げ下げにもまったく問題は起こりませんでした。

このように書いてしまうと、術後から直ちに元気満々という印象を受けてしまうかもしれません。しかし実際はというと、傷口は痛く、おなかは重く、とてもしんどかったのです。おそらく知識がなかったら、安静にしているだけで、筋トレなどしなかったでしょう。知識は大事です。この本を書いた理由もそこにあります。

私は2度死んでいてもおかしくなかった

検査で肝臓のCT画像を撮影すると、腰部のインナーマッスルである大腰筋がいっしょに写ります。

東大病院では、この大腰筋の太さと、手術後の回復の速さとの関係を調べていました。私の大腰筋も、データの一例に加わりました。

多くの患者さんのデータの分析から、大腰筋が太いほど、つまり体幹の筋肉がしっかりしているほど、術後の回復が速いことがわかってきたということです。

実際、私自身の大腰筋はかなり太かったらしく、そのおかげで早期の退院が可能となったのかもしれません。

こうして私は、無事に、元気な体で自分の家に帰ってくることができました。筋肉を鍛えていなかったら、私のようなケースでは2度死んでいてもおかしくなかったかもしれません。