ユニクロの「ヒートテック」も人気

スズキのネットワークは強い。偽物ではないジェニュインパーツ(純正部品)が簡単に手に入る。インド人はもう偽物のパーツを買ったりしません。車を買える層の人々は安全でないと嫌だから、純正部品でないと買いません。ここは大事です。

ユニクロはプライスとバリューが見合っています。インドのユニクロ製品は日本よりも高いのですが、それでもインドの消費者はエアリズムとヒートテックを喜んで買っています。日本のみなさんは「インドは暑い国なのにどうしてヒートテックを買うのか」と不思議に思われるかもしれません。

ですが、インドが暑いというイメージはステレオタイプです。今、デリーの温度は東京と変わりません。そして冬になるとデリーは寒い。デリーから北へ行ったらもっと寒い。ヒートテックは必需品です。ユニクロインディアが今11店舗持っていて、売り上げの伸びは前年比で60%増(2023年)だそうです。

ただ、まだ製品の価格は高いと思います。インド工場で製産したら、もっと安くなって、もっと売れると思います。ユニクロはいずれインドで工場を作るでしょう。実際にそういう方向にあるとも聞きました。

進出する日本企業の方に言いたいのは、インドでは現地生産が重要なんです。ですから、われわれ貝印はまず工場を作りました。

小型包丁
撮影=プレジデントオンライン編集部
インドで展開している包丁は三徳包丁のほか、手で持って切ることのできる小型包丁も人気だ

インドで成功したければ「石の上にも十年」

日本で売れないものをインドでちょっとやってみようという怠惰な考え方では絶対ダメです。真剣勝負です。私がいつも言ってるのは石の上にも三年ではなく、インドでは「石の上にも十年」。10年プランで進出しなければ来るな、です。インドは一筋縄でいかない国です。長く努力するしかないのです。

近頃、キリンビールがとても良い発表をしました。提携しているインドのスタートアップ企業、ビラ(BIRA)とインドで「一番搾り」を作るそうです。現地生産です。

インドで一番飲まれているビールはキングフィッシャーですが、キリンビールはスタートアップのビラと組んで造るという。老舗のキングフィッシャーでなく、スタートアップと組むのが私は日本企業にとっていい決断だと思っています。インドのスタートアップと日本の老舗企業が組むというのは進出の仕方としてすごく面白いのです。

ちょっと辛口になってしまうかもしれませんが、CoCo壱番屋もインドに出てきました。まだまだこれからだと思います。店に来ているお客さんを見ると、日本人と日系企業で働いているインド人社員です。これではまだわかりません。もっともっと店を増やして、やはり何かメニューを現地生産することでしょう。

パンディア・ラジェシュ氏
撮影=プレジデントオンライン編集部