「タワマン在住者」を待ち受ける悲劇
たとえば「大型家具を買って搬入に苦労したエピソード」や「夜景の見える自宅でビアガーデンごっこをすることで節約したエピソード」を披露することで、さりげなくタワーマンションの高層階に住んでいることを匂わせるような人がいる。しかしそうした人は虚勢合戦に必ずいつか敗北することが宿命づけられている。
その理由は次の通りだ。
この「エピソードトーク内高級タワマン在住主張型の人」は「都心のタワーマンションの高層階に住めることは経済的・社会的な地位が上な証だ」という(実は全く自明ではないどころか間違ってさえいる)価値観を受け入れてしまっている。
そのため上記の価値観に染まった瞬間、同じマンションのより上層の住人や、より高級な別のマンションの住民など「同じモノサシで自分より上位の人」が確率的にいってもほぼ必ず一人以上いることになる。
エピソードトーク内高級タワマン在住主張型の人に限らず、仕事や学歴などをめぐる虚勢合戦に血道を上げる人にも同様の悲劇が待っている。
エリートも「由緒正しき富豪」には敗北する
たとえば年収を誇りたい人は、商社、外資系コンサル、外資系金融と、仮に理想のキャリアを爆走できても、その過程で桁違いの資産家と縁が出来てしまう。そうした資産家たちに負けまいとベンチャーを創業するか、創業したての会社の役員に就任して株式市場に上場して莫大な創業者利益のおこぼれを狙いだす。
そうすると先に上場を果たした先輩経営者に劣等感を抱いたり、無事に株式公開(IPO)できたとしても今度は時価総額が気になり始めたりする。こうして、劣等感を振り払うために、好きでもない高級ワインのラッパ飲みと洒落こむ。
もちろん、こうした競争に邁進した挙句に、まれに周囲の誰よりも高い時価総額を達成する人もいる。しかし、そうした人は典型的には古都で教養文化に触れ「歴史に守られた由緒正しき富豪」に敗北することになる。
時価総額自慢型の人は茶室での奇々怪々な作法の数々に右往左往する。
そうして由緒正しき富豪から「なんや、新しい、斬新なお作法でんな。そんなふうにお茶は自由に楽しんでもろうたら、それでええんです」などとこの上ない軽蔑/侮蔑の言葉をぶつけられるのだ。