本当は恐ろしい「睡眠薬」
2017年の厚生労働省の調査によると、躁うつ病を含む気分(感情)障害を患っている人は127万6000人に上るとされています。
この数は年々増えており、こうした気分障害が自殺の原因の一つになっていることも指摘されています。
このような気分障害をすぐに解消したいと悩んでいる人が、心療内科などに行って処方される薬は、催眠鎮静薬、そして抗不安薬です。
これらの薬に含まれているのが、短時間で強く作用するベンゾジアゼピンです。
この薬は、脳の興奮を抑えることで、不安や緊張、そして不眠などを改善する薬です。
脳の中にある神経細胞(ニューロン)同士がやり取りするための通信媒体である、神経伝達物質というのがあります。
興奮を抑えるというシグナルを発する神経伝達物質に、GABA受容体というのがあります。このGABA受容体とくっついているのが、ベンゾジアゼピン受容体といいます。
ベンゾジアゼピン系の薬を使うと、ベンゾジアゼピン受容体にくっついて刺激します。これによって、脳内の興奮が抑えられ、不安や緊張が緩和、不眠の改善が行われるというわけです。
薬が切れるとイライラしたり、怒りっぽくなってしまう
この薬は大量に服用しても命に関わらないということから、安全な治療薬として、不安症状の治療に用いられてきました。
ところが、この物質はアルコールと同じように脳の報酬系に抑制的に作用し、短時間で強力な効果があるため、薬が切れるとイライライしたり、怒りっぽくなったりして、依存症によく見られる離脱症状が起きることが指摘されています。
こうした離脱症状を回避するために、症状が良くなっているのにもかかわらず、止めるのが不安で止められなくなるという依存状態になってしまうのです。