国立精神・神経医療研究センターの2010年の調査によれば、薬物依存の原因の1位は覚醒剤、2位は睡眠薬や抗不安薬だった。薬剤師の鈴木素邦さんは「ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は安全な薬とされてきたが、服用をやめられなくなる『常用量依存』の危険性が指摘されている」という――。

※本稿は、鈴木素邦『その一錠があなたの寿命を縮める 薬の裏側』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。

本当は医師も出したくない

ウイルスを退治するには、抗生物質を処方するよりも、自己治癒力で自分の体を治すほうがいいことは、医師は百も承知です。

そして、抗生物質が体の維持に必要な細菌を減らしてしまうこともよく知っています。

しかし、患者さんから抗生物質を出してほしいと言われれば、医師は処方せざるを得ない時もあるのです。

患者さんを説得することも治療上では大切なことです。どんなに正しいことをお伝えしても、安静にして、体調を治す努力をしてもらえなければ意味がありません。

実際のところ、抗生物質信仰の患者さんは、あくまでも体感的にですが、かなりいると思います。抗生物質さえ飲めば病が治るという人たちです。

抗生物質の副作用は大きい
写真=iStock.com/seb_ra
抗生物質の副作用は大きい(※写真はイメージです)

抗生物質の副作用は大きい

お会いする患者さんの中には、抗生物質を出してくれる医療機関にしか行かないと公言される方もちらほらお見かけします。

もちろん、医師として、抗生物質でなければ、退治できない細菌性の肺炎の症状などの可能性があって処方する場合もあると思いますが、患者さん説得も含めて治療ですから、医学的な見地以外で判断しているケースも多くあるだろう思われます。

患者さんが「抗生物質を出してほしい」と医師に伝えれば、医師は処方するでしょう。

しかし、抗生物質は「とりあえず」「心配だから」で飲んでいい薬ではありません。抗生物質で風邪の症状が改善されることはほとんどありません。

むしろ、抗生物質を飲んだおかげで、下痢や腹痛が起きたり、アレルギーが起きたりすることはあるのです。

このように抗生物質を服用すると副作用も大きい、ということを知らなければなりません。