机が隣同士の同僚を50メートル離してみると…

シングルプレックスとは、共通点が1つの関係(例えば、あなたが店の客で、相手がレジを打っている)のことである。もし2人が同じヘアスタイリストを使い、同じジムに通い、同じ教会に通うなら、2人は複数の関連点を持ち、マルチプレックスを持つと定義される。

接点が増えれば増えるほど、人と人がつながる可能性も高まるという研究結果がある。プレックスが増えれば増えるほど、人々の目に触れる機会が増えることを考えれば、これは驚くべきことではない。

衝撃的なのは、距離がもたらす驚くべき効果である。

もし、友人と会うたびに車で6時間かかるとしたら、ただ会うためだけに行かないだろう。1970年代、マサチューセッツ工科大学のトーマス・アレン教授は、オフィス間の距離が人々のコミュニケーションやつながりに、どのような影響を与えるかを理解しようとした。誰かが外国にいる場合、おそらく滅多に会うことはないだろう。

しかし、フロアを挟んで座っているのと、机が隣接している場合とで、どのくらい接触の頻度に差があるだろうか。

コミュニケーションの頻度とデスクの距離をグラフにしたところ、アレンは驚くべき結果を発見した。2人の席が近ければ近いほど、コミュニケーションは指数関数的に増加したのである。2人の距離が50メートル以上離れると、コミュニケーションは途絶え始めた。この関係は後にアレン曲線として知られるようになるが、デジタル・コミュニケーションにおいても同様である。

タブレットを見ながら会話する2人のビジネスパーソン
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“内輪の共通点”以外でつながるにはどうすればいいのか

アレンは著書の中でこう述べている。

我々の研究データは、距離とともにすべてのコミュニケーション手段の使用が減少することを示している。……私たちが誰かと顔を合わせる機会が多ければ多いほど、その人に電話をかけたり、別の媒体でコミュニケーションをとったりする可能性は高くなる※6

親と同じような仕事をする子供が多いことに、私はよく驚かされる。このような共通の基盤があれば、子供のころに見たお気に入りの番組について思い出したり、地元のスポーツチームを観戦したりするときに安心できるかもしれない。

しかし、自分の内輪や育った場所を超えたところに願望や目標がある場合には、これは信じられないほど限定的なものだ。私たちが求めているのは、こうした限定的な要素を超えて人々とつながる方法なのだ。私たちは、尊敬し、あこがれ、成功をもたらしてくれる人々との有意義な関係を望んでいる。

私の場合、億万長者やプロスポーツ選手、セレブ、ビジネス界の重鎮と一緒に育ったわけではない。父はアーティストで母はミュージシャンのため、一緒に育った人はクリエイティブな人に限定されている。それはそれで刺激的かもしれないが、私が学びたいこと、興味ある職業とはまったく無縁だった。