もし盗まれていなかったら、有名になることはなかった

食べ物、音、製品など、何かに触れるだけで、それがより好きになるというのは、私たち誰もが持っている、面白い癖やバイアスだ。

旅先で、その土地の郷土料理を試してみたくなることがあるだろう。オーストラリアで人気の酵母エキスを使った発酵食品、ベジマイトを試してみれば、地元の人は最高のスナックだと断言するが、外国人は控えめに言っても理想的ではないと感じるだろう。あるいは、新曲が発売されたとき、その曲には興味がなかったが、10回目に聴いたとき、その曲の良さがわかってきたということもあるだろう。

これは研究者が「ザイアンスの法則(単純接触効果)」と呼ぶものだ。私たちは、何かに触れれば触れるほど、それを好きになり、信頼し、より心地よく感じるようにできている。

モナ・リザが伝説的な絵画であるのは、それが他のすべての絵画よりもずば抜けて優れているからではなく、むしろ私たち全員が何度もそれに触れてきたからで、そもそも私たちが絵画に触れたのは、それが盗まれたからにほかならない。

もし盗まれていなかったら、私たちはこの絵のことを知ることもなかっただろう。何百万枚もの写真やセルフィーを撮られることもなく、ルーヴル美術館の脇の小部屋の壁に飾られたままだったかもしれない。

パリのルーヴル美術館入り口にあるガラスのピラミッド
写真=iStock.com/Jean-Luc Ichard
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人間は、自分と根本的に異なる人とはつながりを持たない

単純接触効果は非常に強力で、私たちが何を食べ、どのような服装をし、誰と時間を過ごすかに影響を与える。面白いことに、私たちが何よりも接触しているのは自分自身だ。だから、自分と最も共通点を持つ人が、私たちとつながる可能性を最も持っているというのは理にかなっている。

私たちが行った、出会い系に関する調査で、ほとんどすべての特徴(イニシャル、大学のタイプ、NCAAスポーツの経験、宗教など)において、共通点が多い人ほどつながる可能性が高いことを発見した理由でもある。

正直に言えば、私たちのほとんどは、自分とは根本的に異なる人たちとはつながりを持たない。私たちは、政治的見解、収入レベル、宗教的信条、好きなスポーツチームなどが似ている人と、一緒に過ごす傾向がある。

「マイクは違う宗教の信者だけど、私たちは親友だよ」と言うかもしれない。常に異常値はあり得るが、マイクの収入、キャリア、政治的見解、価値観、好きなスポーツチームなど、あなたと重なる部分がたくさんあるはずだ。これらは「マルチプレックス(多重関係)」と呼ばれる。