上から目線のメディアも今回ばかりは違った

農家の抗議の声は、農業政策にとどまらず、政府の政治全般に向かっている。現政権は、国家経済をまったく無視し、左翼のイデオロギーに基づいて再エネ振興や難民に途方もない額のお金を使っている。

さらに、外相や開発相も、世界中で景気よく巨額の援助をばら撒き、得意満面になっているが、そのかたわらで、勤勉に働いている肝心のドイツ国民は、重税、増税、そしてインフレに苦しんでいる。

さらに、足元では教育が崩壊し、インフラが老朽化し、経済成長は止まり、すでに産業の空洞化が始まっているのだ。ここまで急激に国家が弱体化しているというのに、ショルツ政権にそれを回復させる気も、能力もないなら、潔く責任をとって退陣すべきだと、デモに集まった人々は思っていた。

「年明けを待って、これまで誰も見たことがないほど激しい抗議活動を繰り広げる」と、農民連盟の代表は、怒るデモの参加者に向かって宣言した。それに対してオツデミア農相は、「農家の言い分を理解する」と、神妙な顔つきで答えた。

興味深かったのは、この後のメディアの反応。主要メディアは高慢なので、元来、どちらかというと農家をバカにしている。これまでも、農民のEUの農業政策に対する抗議活動は時々あったが、メディアはそれらを必ず上から目線で報じた。

ドイツ・ベルリンのブランデンブルク門の前に若い女性
写真=iStock.com/Xsandra
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高速道路が封鎖されても国民が歓迎したワケ

ところが、今回は様子が違った。というのも、手工業者、運送会社、各種の自営業者、そして一般の普通の国民が、やはり怒りをあらわに、あっという間に農家の支援に回った。彼らも、これまで2年間のショルツ政治への抗議の気持ちを込めて、農民と連帯し、共に立ち上がろうとしていた。そのとたん、風見鶏のメディアは、デモに否定的だった当初の意見を引っ込め、慌てて中立を装った。

それを見た政府は1月4日、前言を撤回し、農家に対する優遇措置の一部には手をつけないと表明。これによってデモを中止させ、政府の面目を保とうと試みたのだが、時すでに遅し。農民の怒りにも、国民の怒りにもブレーキをかけることができず、8日、通告通り、農民連盟は多くの支援者と共にデモに突入した。ちなみに、ショルツ首相の社民党の支持率は、現在たったの14%。国民は、現政権にはとっくの昔に愛想を尽かしている。

8日、デモの参加者は、全国あちこちの都市でトラクター、およびその他の車両を展開し、道路だけでなく、多くのアウトーバーンの入り口を封鎖。全国の交通を麻痺させた。それでも、国民の支援は驚くほどあつかった。ショルツ首相は、「批判は民主主義の一部であり、必要なものだ。それについては誰も文句を言うべきではないし、私も言わない」と弱気のコメント。ショルツ政権は、まさに末期症状である。