尿は、からだの状況を映し出す鏡と言われる。健康な尿と異常な尿にはどんな違いがあるのか。泌尿器科医の堀江重郎さんは「尿は本来、透明の淡い黄色。赤やピンク、紅茶のような色の尿が出た時は、迷わず病院に行ってほしい」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、堀江重郎『尿で寿命は決まる 泌尿器の名医が教える腎臓・膀胱 最高の強化法』(SB新書)の一部を再編集したものです。

試験管を持つイメージ
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「弱酸性の尿」が健康なからだの証

LDLコレステロール値、中性脂肪値、血糖値、尿酸値……。

健康診断というと血液検査にばかり注目が集まりがちですが、これからは、尿検査の項目にも、もっと注目してください。次のように、尿は、血液に引けをとらないくらい「からだの情報の宝庫」といえます。

【尿のアルカリ度と酸性度――健康体の尿は「弱酸性」】

肉など酸性の食べ物を多く食べたとき、発熱や下痢があるときは、尿はより酸性に、野菜などアルカリ性の食べ物をたくさん食べると、尿はよりアルカリ性になります。尿には体内の酸性物質を排出する役割もありますから、尿のpHは「弱酸性」になっているのが普通です。数値でいうとpH5.5~7.5が標準とされています。

ちなみに、酸性、アルカリ性というと、アルカリ性のほうがいいように思われている節がありますが、そんなことはありません。

アルカリ性では雑菌が繁殖しやすいため、もし尿が継続的にアルカリ性に傾いていたら、膀胱炎などの尿路感染になりやすいのです。逆に、もし尿が継続的に強酸性に傾いていたら、糖尿病や痛風の原因となる高尿酸血症が疑われます。やはり「弱酸性の尿」が健康なからだの証というわけです。

目では確認できない血尿もわかる

【尿の比重――低すぎると、腎臓の不具合が疑われる】

水の比重は「1」ですが、尿には、腎臓でこしとられた老廃物や有害物質など、さまざまな成分が溶け込んでいます。したがって比重は「1」より重くなり、1.010~1.025が標準値とされています。

この範囲を外れると、血液をろ過する腎臓に、何らかの不具合が起こっていると考えられます。睡眠中に何回もトイレに行き、尿量が多い「夜間多尿」では、尿を濃縮するホルモンであるバソプレシンの分泌が悪く、比重が低いことがあります。

【尿潜血――尿路感染症、結石、さらにはがんのサインであることも】

尿検査では「尿中の赤血球」を検知するため、目で確認できないレベルの血尿もわかります。尿潜血は、赤血球の成分が尿に含まれているか検査します。「陽性」と出たら、膀胱炎や尿道炎、腎炎、前立腺炎、尿路結石、嚢胞のうほう(腎臓内に小さな袋ができ、そこに尿が溜まる)、さらには泌尿器系のがんなど重い病気が疑われることもあります。

とくに喫煙者で尿潜血がある場合には20%近くに膀胱がんが見られるともいわれていますので、タバコを吸っている人やその家族は定期的に尿潜血を調べるとよいでしょう。また、60代以上の女性では、閉経後に膣が収縮したり、抵抗力が落ちて尿道周辺が感染しやすくなったりする関係で、尿潜血が出やすくなります。