寝台電車「サンライズ瀬戸・出雲」の登場

こうした2つの問題の解決策として、寝台電車による運行が再評価されることになった。寝台電車は国鉄時代に581系および583系が開発され、その一部は当時も使用されていた。国鉄の寝台電車は昼夜兼行で効率的な運行をめざしていたが、新たな寝台電車では夜行列車に特化し、寝台などの居住性のよさと運転性能を追求することになった。

寝台電車化の対象となったのはJR西日本の車両で運行されていた「出雲3・2号」「瀬戸」だった。両列車はJR東海の管轄区間(東海道本線熱海〜米原間)も通行し、その距離も相応に長い。そうしたことから新型寝台電車はJR東海とJR西日本の共同開発となり、285系寝台電車が誕生したのである。

1998(平成10)年7月10日、285系電車は寝台特急「サンライズ出雲」「サンライズ瀬戸」としてデビューした。車両は指定席料金で利用できるカーペット方式の「ノビノビ座席」を除き、すべて個室寝台で編成され、その設備も住宅メーカーの協力を得て、これまでにない魅力を秘めたものとなった。

サンライズのシングルデラックスの室内
筆者撮影
サンライズのシングルデラックスの室内

また、食堂車はつくられなかったが、「あさかぜ」や「瀬戸」での活用が始まっていたシャワールームも用意され、21世紀に向かう夜行列車としてJRの意気込みを感じさせるものだった。

サンライズのシャワールーム
筆者撮影
サンライズのシャワールーム

285系の導入で所要時間が大幅に短縮

運転時刻は「出雲3・2号」東京21時10分発→出雲市翌日10時46分着/出雲市16時55分発→東京翌朝6時27分着が、「サンライズ出雲」では東京22時00分発→出雲市翌日9時59分着/出雲市19時06分発→東京翌朝7時12分着となった。

また、「瀬戸」は東京20時50分発→高松翌朝7時35分着/高松20時37分発→東京翌朝7時12分着が、「サンライズ瀬戸」では東京22時00分発→高松翌朝7時27分着/高松21時26分発→東京翌朝7時12分着となった。

両列車とも所要時間が大幅に短縮され、最高時速130キロ、加減速性能も優れた285系電車の性能をいかんなく発揮したのだ。

なお、「サンライズ出雲」「サンライズ瀬戸」の東京発着時刻は同一だが、実は東京〜岡山間は両列車を併結するかたちで運転されている。需要を鑑みた施策でもあるが、列車密度の高い区間は1本の列車として走行することで、ほかの列車への影響を小さくしたのだ。

岡山駅で出雲行と高松行に切り離されるサンライズ
筆者撮影
岡山駅で出雲行と高松行に切り離されるサンライズ