「雨は四〇日と四〇夜降りつづいた」。
いうまでもなく、ノアの洪水の素っ気ない記述である。気象は神が支配し、人間の力が及ばない世界だからこそ、古来、旱魃が続けば、神に生贄を捧げ、祈祷師が雨乞いの祈りを続けるといった儀式が、あらゆる地域で行われてきた。科学技術の発展は、祈祷師ではなく普通の人間が気象や気候を支配する、SF的な未来のストーリーをもたらした。
19世紀末になると、アメリカではレインメーカーと称する人たちが注文に応じて気候を提供するというビジネスを始め、火薬や爆発物を利用して、雨を降らすための様々な実験をしている。その多くはペテン師に近いのだが、荒唐無稽な試みを重ねては、旱魃や雹、ハリケーンに悩む人々から報酬を受け取っている。もちろん、そのすべてがペテン師ではなく、気象の専門家として初めて政府に雇われたジェイムズ・エスピーのように、「あらゆる大気の乱れは、蒸気力によって生じる」という理論を立て、科学史において高い評価を受けている人物もいた。
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