東日本大震災の発生以来、地震、津波、原子力と科学用語が氾濫しているが、これらの理解にもっとも重要なのが物理学である。新幹線も携帯電話もそのお陰なのだが、実は物理学はそれほどやさしくない。

著者は日本を代表する宇宙物理学者で、抽象的な宇宙論をわかりやすく解説する名手でもある。「自然が引き起こしているすべての事象は、人間の知恵によって理解できる」(14ページ)と、「少し傲慢そうにみえるが」と控えめながらも毅然と述べる。

物理学の目的は、自然界の多様な現象に対して「現象を担う物質の性質・運動・反応性などによって説明できる理論を構築する」ことにある(16ページ)。そして、その理論は「予言性を持っていなければならない」と著者は言う。科学は予測と制御の力を持つが、中でも一番「予言性」のある学問が物理学なのだ。