400人が受けて1桁しか受からない狭き門

イングランドサッカー協会によるエージェントの試験は、毎年300〜400人が受けて1桁しか受からないような狭き門でした。

難関だと知っていましたが、英語力をこれ以上伸ばすための方法も見つからず、難関といわれる試験を受けたら英語の勉強になるかもしれないと考えたわけです。

資格を取得できたら儲けものです。同時に、能活らの状況を見ていて、「知識が必要」とも感じていました。

ただ、仕事をしながらだったので勉強は大変でした。

当時の社長にはバレていないと思いますが、夜7時か8時まで仕事をして、会社のシャワーを浴びて朝の5時まで勉強し、そこからみんなが出社する9時までちょっと寝るという生活です。

でも終盤は、この生活では合格できないと感じ、仕事の電話から逃れるために日本に戻って勉強することにしました。試験前の最後の1、2カ月は日本の図書館にこもって勉強につぐ勉強でした。

FIFAとイングランドサッカー協会のレギュレーション、そして商法や民法といった想定される領域を網羅するような勉強を心掛けました。

やっているうちに、「意外といけるんじゃないか」という感覚がだんだん湧いてきたのです。

2回受けたら1年間は受けられないというルールで、なかには7、8年かけて取得する人もいます。イタリアで取得した日本人は、7回も落ちたと聞きました。日本の司法試験くらいのレベルともいわれていた試験です。

ある意味、「人生、二度も三度もこんな勉強はできない、やれるところまでやってみよう」という覚悟でした。

参考書と筆記用具
写真=iStock.com/taka4332
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日本人初のイングランドのエージェント試験に合格

完璧に頭に入れたという自負はありました。イギリス人に勝つためにはあやふやな知識ではダメなので、それこそ規約の何条に何が書かれているというレベルまで記憶しました。

いまでは忘れている点もあるでしょうが、当時は誰よりも頭に入っていたと思います。自分で問題をつくり、何度も何度も繰り返しました。ひたすらに繰り返して覚えるというのは受験勉強で学んだ手法です。

書類審査もありました。留学だけでは取得資格は得られず、社会経験がなければ通過できません。

私の場合、アーセナルで仕事をしていてサッカーに携わっていたことが評価されたのだと思います。試験の難しさも関係するのでしょうが、イギリスでは元選手というのは意外と少ないのです。オックスフォード大学卒といったような高学歴の人が合格していました。

2004年、33歳でエージェント資格を取得できました。

本場イングランドの難関を突破した初めての日本人ということでした。