「誰と付き合うか」を選べるようになった
恋愛だけでなく友達付き合いでも、かつてのような喧嘩しながら関係を作っていくのではなく、2000年以降は喧嘩や対立をしないように場の空気を読んで、気遣いの中で付き合っていくというスタイルが主流になったという。
ネット環境が急速に普及し、誰かの助けがなくても生活できるようになって、人間関係は付き合いたい人とだけ付き合えばよくなった。つまり、「誰と付き合うか」を選べるようになったのだ。その代償として、選ばれない不安が高まったのではないか、と石田教授は説明する。人間関係を切られないためには、相手の気分を害さない、迷惑をかけない配慮が求められるという。
「マッチングアプリやパーティなどの婚活サービスでは、仲間内で気まずくなるリスクを軽減できます。告白も確実にラクになり、ダメなら次にいけばいいというライトな感覚でできる。ただし先ほど申し上げたようにトーナメント戦なので、結婚に至らない場合が少なくありません。うまくいかない人は自分を受け入れてくれる人は世の中にいないのではないか、自分は結婚には不適応なんだ、それならわざわざ結婚する必要あるのかと、自己肯定感を下げ結婚を諦める方向にも向かいやすいと思います」
婚活ではコミュニケーションや見た目をよくする講座などマッチング成功率を上げる術も指導されるが、それも今の自分を否定する行為であり、自己肯定感が下がりやすい。
「結婚をわざわざする必要がない」という社会
ここで改めて疑問に思った。そもそも「結婚」をする必要があるのだろうか?
石田教授は「1980年代は多くの人が結婚していて、日本に住んでいたらサラリーマンになって結婚して子どもを育てるというレールが当たり前に存在していた」と指摘する。今の40代以上の中には「結婚していないとまっとうな生活を送っていない」というレッテルを貼られる経験をした人も多いだろう。
「男性の場合は結婚していない人は昇進させないというような風潮さえありました。それが1990年代後半に未婚化が進み、2000年代あたりから結婚をする・しないは個人の選択という風潮が強まり、結婚しない人が増えてきました。2020年の国勢調査では50歳の未婚率が28%です。それは結婚をメリット・デメリットで考えると、デメリットが大きいから。告白と同様、リスクも高いのです。結婚してもパートナーとうまくいくかわからないし、子どもが生まれるかもわからない、生まれてもその子どもがまっすぐ育つかわからない、経済的負担もあるーーとなれば結婚をわざわざする必要がない、となります。それに対する返事は難しいですよね」
社会のセーフティーネットが弱くなり、どこかで何かを失敗すればどこまでも転がり落ちていきそうな不安定な時代を私たちは生きている。そこで結婚を選択するのは、現代では確かにリスクが高い行為だ。