演じる役でまったくの別人に化ける

9位 滝藤賢一 35点

妻が遺した謎を追う内向的な夫から神経質な殺し屋まで

今年はCM頻出の印象が強い滝藤だが、圧巻の主演「グレースの履歴」(NHK BS)に触れておきたい。

内気な研究職の男が愛する妻を海外の事故で失う。彼女が遺した愛車には謎のカーナビ履歴。これをたどることで過去と対峙たいじし、悲しみと喪失感と孤独を和らげていくロードムービー的作品だ。不器用な男を器用な滝藤が見事に演じきった。

スペシャルドラマ「友情」(テレ朝)では山中伸弥を完コピ、「今日からヒットマン」(テレ朝)では伝説の殺し屋(しかも初回で死ぬ)役。一度見たら忘れない濃い顔なのに、演じる役でまったくの別人級に化ける技は称賛すべき。

不遇、理不尽といえばこの俳優

8位 岡山天音 36点

お人好しが服着て歩いているような独特の持ち味

ここ5年、連ドラで観ない日はないくらいの大活躍で、出演数も増えた。

人畜無害の優しくて平たい顔と声は、本質重視かつ危機管理能力の高い令和女子に人気といっても嘘ではない。基本、お人好しの役が多く、場にすっとなじむが決して無個性ではない。

「日曜の夜ぐらいは…」(テレ朝)で見せた女子会への馴染み方、「こっち向いてよ向井くん」(日テレ)で演じた価値観の違いに悩む夫、正月時代劇「いちげき」(NHK)で見せたお人好しにもほどがある弱さ。

画面の端でこっそりいい表情をしているから、ぜひ観てほしい。比類なき優しさが、不遇あるいは理不尽な扱われ方をするという場面を彼一人が請け負っている感もある。

7位 杉本哲太 40点

今年の哲太は「傲慢ごうまんで協調性のないおじさん」を貫徹

よう出とるなぁと思うベテラン役者は多いが、嫌悪すら催させる傲慢な中年男性役を一手に引き受けた今年の哲太。

「ペンディングトレイン」(TBS)や「ダ・カーポしませんか?」(テレ東)では、生命の危機に見舞われている集団の中でとにかく傲慢かつ自己中心的な役割を担った。

他にも、毛色の異なる善人役もこなしたのだが、個人的には「Get Ready!」(TBS)の第3話が記憶に残っている。無残に殺された娘の復讐に、余命僅かだが全身全霊で挑む男の役。ドラマ自体は不評だったが、この3話だけは哲太の熱演で高品質かつ納得の結末に仕上がった。