惜しくもランク外だった名優たち

さて、ここでちょいと次点をご紹介。

32点をマークした4人は、溝端淳平・山中崇・永山瑛太・磯村勇斗。

溝端は大河でえげつない嫉妬に狂う今川氏真を好演し、「何曜日に生まれたの」(テレ朝)で野島伸司イズムを品よく演じたことで高評価。

山中崇はいわずもがな「VIVANT」のアリ役だ。家族を囚われ拷問される悲劇を現地の俳優ではなく、山中に託した意味がわかった。

瑛太は「あなたがしてくれなくても」(フジ)で言葉が足りない不器用な夫役と「時をかけるな、恋人たち」(フジ)で一途な愛を誓う未来人役。真逆の男性を好演したことで相乗効果が。

磯村は、安定のジルベール(「きのう何食べた?」テレ東)、NHKEテレが放った多様性恋愛ドラマ「東京の雪男」で好演。文明社会に汚されていない雪男の無垢むくさが目を奪った。

この4人の下には酒向芳・青木柚・毎熊克哉・森崎ウィンと続くのだが、来年も引き続き活躍の場を広げると予測している。ということでランキングへ戻ろう。

日本の教育の場で語り継がれるべきドラマ

6位 松下洸平 42点

別名・非恋愛王。全方位外交も一方通行も説得力

天海祐希のバディ役には、ぼやっとした女性や負けず嫌いな女性の印象が強かったが、新機軸を打ち出したのが「合理的にあり得ない」(フジ)の松下。IQが高くて語学堪能、催眠術も金庫破りもお手のもの、ある種の天才なのだが女性が苦手。

天海を騙してきた罪悪感も抱えながら、最上級の敬意を払う役どころ。また「いちばんすきな花」(フジ)では、本当はおしゃべりだが嫌われないよう配慮するうちに都合のいい人になってしまった男の役。

どちらも、恋とか愛とか欲ではなく、「敬意と好意」で新しい人間関係を築こうとする役で、まさに令和の象徴だった。ドラマ界の恋愛至上主義を打破する担い手として、非恋愛王の称号を授けよう。

5位 役所広司 42点

無策無力で保身しかない権力と闘うリーダー像

「THE DAYS」(Netflix)はエンタメ作品ではなく、日本の教育の場で語り継がれるべきドラマ。数多くのオファーの中から役所がこの作品を選んだことにまず敬意を(吉田昌郎所長の決断と無念に思いを馳せたに違いない)。

東日本大震災で起きた福島原発事故の現場を指揮するリーダーを、役所以外の誰ができただろうか。

東央電力本店や官邸の無責任かつ無慈悲な錯乱に対して、激昂をはるかに超える憤慨を役所がどう表現したか、ぜひ作品を観て確かめてほしい。

リーダーで言えば、「VIVANT」でテロリスト集団のリーダーも務めた。続編の描き方次第だが、役所がどの作品に出演すべきかは今後も関心を向けたい。

世界の役所を泥船テレビに引きずり込むには、制作陣の覚悟が問われている気もするけどね。