頭を抱える地方自治体

同じ理由で、ChatGPTの導入がうまく行っていないのが地方自治体です。

ChatGPTは前述の通り、大量の学習データを読み込ませて学習させていますが、それはウェブ上の情報が基になっており、広く一般で知られている情報については大量に学習しています。従って「広く一般的なこと」を尋ねれば正確性も高まりますが、ローカル情報や、あまり知られていない情報、例えば個人に関する情報は学習した量が少ないので、仮に尋ねても正確さは期待できません。

しかしこうした仕組みをよく理解していないのか、地方自治体がChatGPTを導入する際に「地元の名産の情報を生成させようとしたが、不確かなものしか出力されなかったので使えない」と判断している状況が聞こえてきます。

しかし、これは明らかに使い方を間違っているケースであり、ChatGPTの問題ではありません。

そこで地元の情報を正確に出力できるように、高いコストを払ってChatGPTのチューニングを委託した自治体もありますが、どのような情報をチューニング対象にするかで困ることになりますし、チューニングしたところで期待したような出力が得られるかは分からないのです。

国立情報学研究所のマスコットキャラクター「ビットくん」と佐藤教授
写真=プレジデントオンライン編集部撮影
国立情報学研究所のマスコットキャラクター「ビットくん」と佐藤教授

ジョブ型はAI導入に不向き

ChatGPTを含めて、AIによって仕事の効率が変わるのであれば、AIを活かすことが求められますが、どんな仕事がAIを活かせるのかは予測がつきません。例えばChatGPTが登場する以前、生成AIがここまで実用的になるとは思っていなかったはずです。

従って、そのとき時々でAIができることを見極めて、そのAIを活かせるスキルが重要となってきます。従って、AIの進化とともに仕事の内容を変えることが求められます。

日本の会社は、「その時必要なスキルを持つ人間を雇う」というジョブ型雇用ではなく、大企業になればなるほど「職務や勤務地を限定せず新卒で正社員を一括採用し、長期にわたって雇用する」というメンバーシップ型の雇用形態をとっているケースが多いのですが、実はこうしたメンバーシップ型の雇用体系はAI時代に合っています。

というのも、AIの影響で仕事の差配が変わる際に、何がどこまで変わるかをあらかじめ予測してその都度、人を雇っていると、予測が外れたときにはその人物を解雇して新たに人を雇わなければならず、あるいは中の業務を理解するまでに時間がかかってしまったりして、かえって企業体の機動力は低下してしまうのです。

一方、メンバーシップ型であれば、中の業務への理解はありますから、業務とAI導入をどのように調整すればうまく行くかを考えやすいという利点があります。