「収入の10分の3を目指しています」

しかし、伊藤さんは、そんな嫁のオーラにまったく意に介した様子はなく淡々とした表情で語り始めた。

「確かに、自分から見たら“ここまで頑張って欲しい”っていうところがありますから、つい息子たちに対していろいろと言いすぎてしまうところもあるのかもしれません。そういうところは、やっぱり親子の間で難しいとこだと思いますね」

新築マイホームを建てたファミリーがここまで嫌がるというのは、伊藤さんはどれくらいの献金をしているのか。質問をしたところ、伊藤さんは「10分の3を目指しています」と答えた。

それを聞いて、横にいた鴨野さんが驚いて「え? 本当に10分の3ですか」と聞き返した。伊藤さんが頷くと「これはすごい人ですね」と感心をして、私に信者の「献金事情」を解説した。

「キリスト教では昔から収入の10分の1を神様の教会に献金しなさいという伝統的な教えがありまして、うちの教団でもそうなっています。でもね、実はこの教えを守っている人というのはうちの教会でも大変真面目で優秀な信徒という扱いですね」

向かい合って話す二人の、テーブルの上に置かれた手
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「収入の10分の1」の献金もかなり難しい

「高額献金」「霊感商法」という言葉が世間で飛び交っているので、世間では旧統一教会の信者はみんな家計をかえりみることなくとにかく私財を投げ打って極貧生活を送っている、と誤解をしている人も多いが、実は山上徹也被告の母のように破滅的に献金をする人ばかりではなく、収入の10分の1という目標もクリアできていない信者も大勢いるという。

「手取りではなく、給与の額面の10分の1をきちんとやっている人がいたら“すごいですね”と尊敬されます。当然ですよね。給料が額面で30万円だったら毎月3万円を献金されるわけですから、家族を養う場合はかなり大変ですよね。でも、それなのにこの伊藤さんは10分の3だとおっしゃっている。私も長いことこの教会にいますけれど、そんな方にはあまり出会えたことがないですよ」

そんな風に伊藤さんを紹介してくれた鴨野さんが興奮気味に驚いていると、伊藤さんは少し照れながら「本当は3分の1という意識だったんです。タイにいた時からずっとそうしてきたので」と言った。すると、鴨野さんは前のめりになって、さらに目を丸くした。

「3分の1! いや、それはすごいですね」

伊藤さんによれば、タイにいる時は収入の3分の1を目指して献金をしていたので、日本に帰ってきてからもその意識が続いているという。しかし、工場勤務や介護の仕事はそれほど高収入ではなく、経済的には厳しい部分があるので10分の3にしているという。

「できてない部分がほとんどなんですけれどね」と謙遜をしながら笑う伊藤さんを、鴨野さんは目を丸くして驚いている。しかし、伊藤さんの隣で、笑っているわかこさんの表情が、どことなく引きつっていたことを私は見逃さなかった。