「日本人をおだてておけば小遣い稼ぎになる」

さらにA氏は、著名な経営者であるX氏の書籍を制作していた際に聞いた話も教えてくれた。

「Xさんが話していたのですが、日本で暮らす外国のビジネスパーソンたちの間では『テキトーに日本のことをホメそやして、〈日本最高!〉みたいな本でも出せば、ちょっとした小遣い稼ぎが簡単にできるぜ』なんてジョークが酒飲み話などで語られているのだとか。『日本人は、外国人から日本のことをホメてもらえると、尻尾を振る犬のごとく喜ぶ』と感じている外国人は多いらしい。Xさんは『対等に扱われていないことに気づくべき』『外国人のお世辞を真に受けて、満足しているようでは、足をすくわれる』と指摘されていました」

私もまったくもって同感である。現在の日本という国、そして日本人はどこかナメられているのだ。

ちょっと目端の利く外国人であれば、日本がもはや凋落ちょうらく国であることを把握しつつも、まだ多少のカネは持っていて、文化度もそれなりに高く、アジア唯一のG7国としてささやかな影響力も残していることを理解している。

「ま、当座は日本のことをホメておくか。そうすれば、まだまだカネが搾り取れるだろうし、何かしらのリターンだって得られる可能性はあるかも」――そう考えて、要領よく立ち回っている外国人も多いに違いない。アメリカの製薬会社が作った新型コロナウイルスのワクチンを、お人好しに7回もキメたのは日本だけである。

「衰退途上国」であることを自覚すべき

とはいえ、成長力や勢いといった点では、日本はいまや完全にシンガポールやマレーシアに抜かれている。GDPの順位も中国に負けて、3位だ。2023年はドイツにも抜かれて4位に落ちる可能性もある。

こと電子産業やIT分野では、中国、韓国、台湾といった東アジアの国々に追い越され、挽回の気配すらない。世界における競争力も、存在感も衰えるばかりの斜陽国家――それが現在の日本なのだ。「衰退途上国」とも評される状況だというのに、外国人からおだてられて「よかった、まだ日本は“いい国”だと思ってもらえているようだ」と安堵あんどしている場合ではない。

中川淳一郎『日本をダサくした「空気」』(徳間書店)
中川淳一郎『日本をダサくした「空気」 怒りと希望の日本人論』(徳間書店)

バブル期の日本は、よくも悪くもゴーマンだった。当時アメリカにいた私は、日本人駐在員が「アメリカ人は仕事が終わってないのに定時に帰るし、仕事ぶりも雑だ」と見下しているさまを不快に思ったものだ。また、ソニーの盛田昭夫氏と石原慎太郎氏の共著『「NO」と言える日本―新日米関係の方策』(光文社)という本を読んで「もう少し謙虚になれよ、ジイさん……」と呆れたことを、ハッキリ記憶している。

しかし時は過ぎて、日本の立ち位置は変わった。日本という国、そして日本人は、実に卑屈になってしまった。極論を承知で述べるが、日本人はバブル期のゴーマンさを思い出さなければならない。当時の盛田氏や石原氏のようなゴーマンさの半分でもいいから、日本人は持つべきなのだ。

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