「睡眠時間が短いとネガティブ」の大誤解

アメリカのとある調査などで、8000人を調査したら5時間以下の睡眠時間は死亡リスクが高いだの、病気のリスクが高いといったことが出たりすることがあります。

では、ショートスリーパー(短時間睡眠者)になると、この調査のようなリスクが本当に上がるのかというと、全くそんなことはありません。

なぜ、統計で短時間睡眠のほうが健康面でリスクが高いというデータが出てしまうのかというと、次の2つの理由があります。

1.そもそも自分の健康にネガティブな人は、睡眠時間を短く計算してしまう

これは多くのエビデンスでもあるのですが、不安や不満を抱えている人は、実際の睡眠時間に対して短い時間をアンケートに記載するというデータがあります。

睡眠業界はこの法則を逆手に取って、睡眠時間が短いとネガティブになる……といった表現をしますが、実際には因果関係は逆の可能性が高いのです。

このことから、5時間以下と回答するほとんどの人が、そもそもすでに自分の健康に対してネガティブな印象があり、この人たちの病的リスクや死亡リスクは一般人よりも高いことになります。

なぜサーファーは早起きでも元気なのか?

2.睡眠時間が短い理由が能動的な短時間睡眠ではない

あなたの周りで、自発的かつ能動的に睡眠時間を短くしている人はいますか?

仮にサーファー(夜明けとともに海に出る人が多い)や釣り(早朝から始める人が多い)が趣味な人がいたとして、おそらくその人達は、一般的な人の予想よりも元気な状態ではないでしょうか?

これは、ほとんどの人が仕事の残業や忙しさから睡眠時間が短いことが多いということです。

米国の調査会社が、「グローバル職場環境調査」という名目で仕事への熱意や職場への愛着の割合を測定したところ、2022年の日本は5%の人しか熱意と愛着がなかったとのことです。

仕事の合間に疲れたように顔を覆う男性
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

なお、この5%という数字は、145カ国の中で最下位であり、日本は4年連続でワースト1位を記録しています。

つまり、仕事に対してポジティブではない状態で長時間労働を行うことは、心身に大きなストレスを発生させることに繋がるのです。

お伝えしたいのは、睡眠時間と健康に因果関係があるのではなく、ストレスと健康リスクに因果関係があり、その2つの関係を曖昧な睡眠時間に転嫁しているということです。

睡眠で相反するような話があった場合は、どちらを信じる信じないというよりも、統計的なエビデンスは話半分で聞き、鵜呑うのみにしてしまわないように注意しましょう。