「負の感情」に振り回されない方法はあるのか。脳科学者の中野信子さんは「『嫌な気持ち』は、人間の生存にとって危険なものを避けるためのアラートであり、大切にすべき感情だ。無理に元気を出そうとしたり、見ないふりをしたりしなくてもいい」という――。

※本稿は、中野信子『感情に振り回されないレッスン』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

頭を抱えた男
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「嫌な気持ち」は、危険を知らせるアラート

わたしたちは生まれつき、脳に快い刺激を受けると「これは好き」、不快な刺激を受けると「これは嫌だ」という気持ちが生じるようになっています。そして、この性質に従って、本能的に「嫌な気持ち」を感じるときがあります。

例えば腐った食べ物を見ると、わたしたちは嫌な気持ちになって思わず目をそむけます。もしこのとき、嫌な気持ちを感じなければ、それを食べて自らの体を危険にさらしてしまうかもしれません。

このように、有害なものから自分を遠ざけるために、「嫌な気持ち」を感じさせる仕組みがわたしたちには備わっています。

つまり、「嫌な気持ち」は、人間にとって消すことができない性質のものです。同様の性質はほかの生物にも見られますが、自らの生存にとって妨げになるものを避けるための、基本的な防衛反応のひとつなのです。

逆にいえば、「嫌な気持ち」をごまかして見ないふりをしていると、自分にとって重大な危険を避けられなくなります。

「嫌な気持ち」は、人間の生存にとって危険なものを避けるためのアラートであり、大切にすべき感情のひとつなのです。