遺伝的素質と経済発展という二大要因

日本人が欧米人に比べ背が低いことは、経済成長に伴い栄養が改善されてかつてよりはずっと背が高くなった今でも、テレビで見る外国人、国内にいる外国人との比較で感じていることである。

こうしたもう少し具体的な各国の状況を見るため、大陸別に平均身長の高い順に主要国のデータを女性を含めて図表2に掲げた。

【図表】平均身長の主要国比較
筆者作成

男女はほぼ平行したパターンとなっているので、男性についてみてみよう。

日本人男性の平均身長は172cmであり、最も背の高いオランダ人男性184cmより12cm低くなっている。背の高い方では、オランダの他、デンマーク、チェコでは男性の平均身長が180cmを超えている。他のヨーロッパ諸国や旧英領植民地のオーストラリア、カナダ、米国といった国のほか、トンガなどオセアニア諸島もほぼ175cm以上と日本人より背が高い。

ヨーロッパは背が高い国が多いが、その中でもポルトガルやイタリアといった南欧諸国では、概して、背は高くない。これもベルクマンの法則に沿っている。

一方、日本人より身長が低い国は、ヨーロッパ諸国にはなく、アジアやアフリカの諸国である。中東のうちサウジアラビア、中南米の一部も日本より背が低い。

ただし、日本より遅れて経済成長した開発途上国が栄養状態の改善などによって身長が伸びたため、現時点では日本人の身長は世界の中でも高い方とは言えなくなっている。

アングロサクソンの中で米国はやや背が低い方にバイアスがかかっているが、これは、背が相対的に低いヒスパニック系の比率がかなり高いためと考えられる。しかし、それだけが要因ではないとみなされている点については後述の通りである。

最も背が低い諸国は、ベルクマンの法則に則した遺伝的な要因と経済発展が遅れているという要因とが両方働いている結果と考えられる。ラテンアメリカのメキシコはラテン系白人にインディオが混血しており、身長は南欧諸国よりさらに低い。もっともメキシコの場合なお途上国のため栄養水準の制約による側面もあろう。