11.7度の水風呂とオロポで「ととのう」

結論から言えば、10回のおかわり熱波で血行は良くなった。その後の11.7度の水風呂と外気浴で、身体は「ととのった」のである。一部ファンの間で「日本一のサウナ」と呼ばれている神戸サウナ&スパの熱波師、前田はさすがの技を持っていた。熱波師とはサウナ室内で熱風をタオルやうちわで送るパフォーマンスをする人をいう。検定試験もある。

1泊2日の取材に来ていたKとわたしは休憩室でオロポ(オロナミンCとポカリスエット、サウナ定番飲料)を飲みながら、非常に満足していた。

現在、サウナはブームになっている。特に熱波師のいるサウナはいつ行っても盛況だ。

発端はサウナを取り上げた『マンガ サ道』(タナカカツキ作、講談社、2011年刊行)が新しいファン層を開拓したことだ。さらに、実写化したテレビドラマ「サ道」(テレビ東京、2019年から)が好評で、熱波師とサウナのブームに火がついた。

そのため、おじさんたちの聖域だった場所にサウナハットをかぶった若者たちが大挙して押しかけるようになったのである。

Kとわたしが出かけていった神戸サウナ&スパもまた例外ではなく、ロウリュ(サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させること)の時間になると、サウナ室前に10人前後の列ができる。

メインサウナは30分おきに「ロウリュ」ができる

神戸サウナ&スパの開業は戦争が終わって9年目の1954年だ。1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災で被災したため、ビルを建て直し、1997年には「神戸サウナ&スパ」「神戸レディススパ」と新名称でグランドオープンした。同店には男性214室、女性30室のカプセルホテルが付属している。

そして、ホテルを兼営しているため、営業時間は年中無休の24時間営業だ。お正月でもお盆でも早朝でも深夜でも、いつ行っても、身体をととのえることができる。

肝心の温浴施設について。男性用のそれは8つもある。

1 ハンガリアンバス(大浴場)
円形の大浴場。地下1004メートルから湧出する天然温泉「神乃湯温泉」を使用している。阪神・淡路大震災後にボーリングした天然温泉である。

2 水風呂
サウナを出た後に入る。露天の水風呂は1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の記憶を忘れないために、11.7度に設定されている。「1.17度にしろ」と言う人はいない。屋内の水風呂はビギナー向けにぬるめの23度と優しい設定温度だ。

3 露天風呂
ビルのオープンスペースに作った露天風呂だ。

4 ジャグジー
気泡風呂。

5 メインサウナ
熱波師たちの道場である。前田たちが「ロウリュサービス」を30分ごとに行っている。コロナ禍になる前までは24時間、ロウリュサービスをやっていた。夜中でも早朝でも発汗しまくる人たちがいたのである。