ロウリュは「やるか、やられるか」

「ロウリュはトータルでだいたい5分以上、10分未満で終えるようにしています。当店ではお客様一人ひとりに風を送るサービスを行っています。おかわりのロウリュをやるから、他店よりも長いパフォーマンスになります。

うちでは華麗なタオルさばきよりも、全力でお客様に向き合うことが第一。熱風を的確にコントロールして、身体のすべての部位にまんべんなく送る。それでご満足いただく。お客様の好みに合うロウリュです。

コロナ前は20分に1回(※)やっていて、一日に67回。3~4人が交代でやっていたのですが、真夏には倒れたスタッフもいます。熱いなかでスポーツをやるようなものですからね。

※編注:現在、ロウリュサービスは30分毎に1回。

失敗はちゃんと風を送れないこと。プロ野球のピッチャーが暴投するみたいな感じで、頭へ送ったつもりが、上の方へ抜けたりする。お客様から『ぜんぜん風来ないよ』って言われたらミスです。ダメです。

体力的にしんどい仕事ではあります。でも、ロウリュを終えると仕事をやり切った爽快さ、全力疾走した達成感みたいなのを感じます。それでも疲れます。ロウリュの後、熱波師全員でバルコニーで涼むんですけど、終わった途端、みんな『はぁ』です。無口になって脱力する。ひとりで10回くらいおかわりする人がいるんですよ。

10回おかわりと聞くと、覚悟を決めて、よし、やってやろうという戦いの気持ちになります。やるか、やられるか、です。10回が30人も続くことがあります。そうなると、手分けするのですが、それでも倒れるのは覚悟です」

サウナ室でもネクタイを外さない総支配人

前述のように神戸サウナ&スパはいつ行っても混んでいる。混んでいるからロウリュが始まる前はサウナ室前で並ばなくてはならない。困った点があるとすればそれくらいだろうか。

サウナ室のなかでもジャケットを着て、ネクタイを締めている総支配人の津村浩彦は「申し訳ありません。ロウリュはお待たせすることが多いです」と素直に頭を下げる。津村は神戸のホテルオークラに勤めていた頃の縁で神戸サウナ&スパへ入社、ホテル仕込みの接客サービスで利用者をもてなしている。

津村は言った。

サウナ業界では「ツムツム」の愛称で親しまれている
筆者提供
サウナ業界では「ツムツム」の愛称で親しまれている

「サウナ業界では『ツムツム』と呼ばれているんです。『マンガ サ道』のタナカ先生が会うなり、『津村さん、あっ、ツムツムだあ』とおっしゃって……。それがファンの方たちに広まりまして、私、ツムツム、なんです。

当館には連日たくさんの方がお越しになります。カプセルホテルは平日は出張などのご利用が多く、週末はつねに満室でサウナ好きの方々がサ旅(サウナ旅)を満喫なさっています。特に年末は一年のなかでもいちばん多くお客様がお見えです」

それこそ「芋の子を洗う」ような混雑だ。

館内を案内してもらいながら、ツムツムが指さすところを見ていった。フロント、廊下、階段など、いたるところに花が飾ってある。造花ではない。生花だ。1週間に一度は取り換えなくてはならない。