外務省が把握できないスパイは大量にいる

外国から日本に来ている機関は、基本的に対外情報機関である。例えば、アメリカはCIA、イギリスはMI6、中国はMSS(国家安全部)だ。ロシアの場合は3つある情報機関、FSB(連邦保安庁)、SVR(対外情報庁)、GRU(軍参謀本部情報総局)からそれぞれスパイが日本に来ている。

これらの機関は、日本に送り込んでいるスパイを表面上は儀典官室に通告しているが、もちろんそうした情報機関関係者以外にもスパイは存在している。外務省への通告には架空の人物を登録するというような噓はないはずだが、本当は情報機関から来ているのに登録しないケースもあり得る。

例えば、Y国は軍属の外交官である駐在武官が日本に来ているが、武官室のなかには軍の情報機関員がいた。しかもこの情報機関の場合、外交官ではない事務技術職員という肩書で所属していることがあるので、外務省は把握しづらい。外交官ではないので外務省にも出身元を通告せずに、日本国内で情報活動をしているといっていい。彼らは日本に暮らすY国人らの動きに目を光らせ、Y国大使館に赴任している外交官や武官らの動向も監視しているといわれている。

外務省
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筆者が某国の大使から受けた依頼

情報機関員たちは、さらに日本国内でスパイ活動を行うための協力者をリクルートする。そうした協力者も、いわゆるスパイということになる。例えば、私が大使館の連絡担当だった時にこんな経験をした。

どこの国かは明らかにできないが、ある時、ヨーロッパの国の大使館に呼び出された。行ってみると、大使から「絶対にこの大使室の外には出ていないはずの情報が漏れていると、自国の情報機関から連絡があった。大使館のナンバー2にも知らせていない情報なのに、どこから外に漏れたのかがわからない」と、調査の協力依頼を受けたのである。

そこでいろいろと調べてみると、大使館に出入りしているS国人の大使館職員しかいないということになった。私は大使館のセキュリティアドバイザーでもあったので、警視庁の外事警察の中に存在する特命チームを動員してもらい、このS国人をマークした。監視すると、このS国人は連日、自分のアパートと大使館の間を往復する日々で、それ以外ではジムや買い物に行く程度の動きしか見せなかった。