「人に迷惑をかけてはいけない」といわれて育った私たちは困ったときも周囲に助けを求めにくい。名門女子校、ノートルダム清心中・高等学校の現校長の神垣しおりさんは「ひとりで手に負えないとき、苦しいときに限らず、もっと気軽に『助けてください』といっていくと、誰もが生きやすい環境に変わりはじめるように思う」という――。

※本稿は、神垣しおり『逃げられる人になりなさい』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

「助けてください」がいえると生きやすくなる

困ったとき、素直に「助けてください」という。それができるだけで、生きることがずいぶん楽になります。

しかし私たちは、「人に迷惑をかけてはいけない」といわれて育ちました。ですから実際には、気軽に助けを求めにくいのが実情かもしれません。

私も「助けてください」となかなかいえませんでしたし、いってはいけないと思っていました。しかし、子育てではそうもいってはいられませんでした。

子どもの保育園時代、吃音の症状が出て悩んだ末に転園しました。当時通園していた保育園で吃音に対する厳しい指摘を受け、違和感をもったからです。しかし、すがる思いで転入した新しい保育園の先生は一切気にせず、驚くほどあっさり症状は解決しました。

ほかにもさまざまな出来事が起こるたびに困り果て、先生方に「助けてください」と頭を下げていました。そうやってSOSを出さなければ、乗り越えられなかったのは確かです。

校長職に就いて、また「助けてください」「お願いします」という場面が増えました。

日々の業務、行事の開催、設備の管理など、学校運営は職員や外部の方々の力なしには成り立ちません。多くの方に協力をお願いし、それぞれの個性やスキル、専門性をもち寄るからこそ、学校という大きな共同体がつつがなく動いていくのだと実感する毎日です。

とはいえ、若い頃の私は子どものこと以上に、自分の仕事をほかの人にお願いするのが苦手でした。「努力が大事だから、自分でやってしまおう」と、ひとりであれもこれもと抱え込んでいたのです。

「HELP!」と書かれたボードを持つ人
写真=iStock.com/CherriesJD
※写真はイメージです

周りには自分にないものをもっている人がたくさんいる

そんな考えが変わったのは、十数年前です。

外国人の教員が「May I help you?」「Please help me」とお互いに助け合っている姿をみるうちに、もっと「助けて」という言葉を使ってもいいのではと、思うようになったのです。

ちょうどその頃、当時の駐日米国大使だったキャロライン・ケネディさんが、「これからは、女性が助けてくださいといえるようになることが大事だ」と語った新聞記事を読み、その意図に共感したこともひとつのきっかけでした。

以来、「ここ、ちょっとお願いします」「助けていただけますか」と、周囲の手を借りるように心がけました。すると、あることに気づきました。まわりには、自分にないものをもっている方がたくさんいたのです。孤軍奮闘しているときには、みえなかったことでした。

「助けてください」といえるようになると、まわりの人からも「助けてください」といわれるようになります。すると、思わぬ化学変化が起きるかもしれません。

ひとりで手に負えないとき、苦しいときに限らず、もっと気軽に「助けてください」といっていくと、誰もが生きやすい環境に変わりはじめるように思います。