いつまでこのお遊びは続くのか
特にみらい平駅の一帯は「みらい志向」が強いらしく、平成の大合併では冗談でなくつくばみらい市(伊奈町+谷和原村)となった。
駅の付近にはどんぐり通り、みらい通り、すこやか公園、なかよし公園などがキラキラと並んでいる。そのお化粧されたほほえみ的ニュータウンの「地下」には、もちろん旧来の大字や小字の歴史的地名の死骸が埋まっているのだが、誰も気にする様子はない。
新幹線が開通すると並行在来線が第三セクターに移管される仕組みになっているが、それらの会社名・線名もキラキラ路線がずっと続いており、終息の兆しは見えない。
東北本線(盛岡~目時)改め「IGRいわて銀河鉄道」、北陸本線(倶利伽羅~市振)改め「あいの風とやま鉄道」、江差線(五稜郭~木古内)改め「道南いさりび鉄道」など、ひらがなに加えて何か観光アピールできる素材を足すのが流行らしい。
私が仰天したのは「えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン(旧信越本線、妙高高原~直江津)」「日本海ひすいライン(旧北陸本線、市振~直江津)」というものだ。
地元の人がこれだけ長い線名を口にしているとは考えにくいが、実生活に不便をもたらしかねないこの種の「お遊び」はいつまで続くのだろうか。命名者本人はイマ風に洒落たつもりなのかもしれないが。その点「三陸鉄道」は質実剛健でほっとする。
誰が「高輪ゲートウェイ」と決めたのか
そこへ来て、2018年12月に決まった東京の山手線新駅「高輪ゲートウェイ」である。ついに東京都区内にもこの手の駅名が上陸したかと感慨深いものがあったが、この駅名に異議を唱える作家の能町みね子さんが始めた「反対」のネット署名はわずか1カ月の間に4.7万件を超え、私も一緒にこの重い署名簿をJR東日本へ提出してきた。
駅名は同社が公募し、結果はダントツ1位が「高輪」であったにもかかわらずの決定だったこと(高輪ゲートウェイは130位)への反感も後押ししたらしい。署名者の意見を少し読んだ限りでは、むしろ若い人たちの方が「わざとらしく飾らない方がいい」との感覚を持っている印象だった。
ゲートウェイもみらい平も、また三セク会社の名前にしても、決めたのはおそらく「名士」クラスの中高年のおじさん(私の世代)だろう。昨今の教育現場ではしきりに「国や郷土を愛する心」が強調されるけれど、歴史的地名を葬ってキラキラを量産する人たちが要所に居座っていて、どんな愛国心が育つのだろうか。