LINEにのめり込み、化粧やファッションに変化が
そういうことじゃない話とは?
「たとえば、こんな毎日でいいのかな、とか、心が満たされなくて寂しくなる時があるとか、世間話の延長みたいなものです」
いや、かなり踏み込んだ話に思えるが。
ラインを交わすことで、あなたはどう変わった?
「自分を気にするようになりました。それまでお化粧なんてあまり気にしなくて、パウダーはたいてリップクリームを塗るぐらいだったのが、ちゃんとファンデーションを付けて口紅も塗るようになりました。新しい服を買ってみたり、今まで気にも留めなかったランジェリーショップが目に入ったり」
そんな自分をどう思った?
「その時はまだふたりで会ったこともなかったし、ただ、ちょっと気持ちが華やいでるなっていう感じです。夫は仕事がある日は帰りが遅くて、会話らしい会話もなくなっていたし、次第に、娘のことや家のこと、ちょっとした相談を夫ではなく、彼にするようになっていました。彼になら何でも素直に話せるんです。でも、恋愛とかじゃないからって、いつも自分に言い聞かせていました。だから彼にも、いい友達でいてくれてありがとうって、いつも言ってたんです」
友達、とわざわざ言葉にすること自体、すでに気持ちが揺れている証拠である。同時に、たとえささいな話だったとしても、ふたりはすでに秘密を共有した仲となっている。それはひとつめのハードルを越えているということでもある。
夫と娘の帰省中に、ファミレスで初デート
彼女は意識していなかったかもしれないが、その時、岐路に立っていたはずだ。
友人のままでいられるか、男と女の仲に足を踏み入れるか。
引き返すタイミングがあるとしたら、その時だったはずである。それに気が付かないはずがないのに、彼女は走り出す感情を止められなかった。関係が進展するきっかけは何だったのだろう。
「夏休みです。夫と娘が夫の実家に帰省した時です。私も一緒に帰るはずだったのですが、どうしても外せないPTAの会合があって、ふたりに先に行ってもらったんです。そうしたら彼も奥さんと娘さんが奥さんのご実家に帰省したとかで、会合の帰り、何となく夕ご飯でも一緒に食べようかってことになったんです」
それが初めてのデートというわけだ。
「デートと言うか、ファミレスですから」
とにかく、初めてふたりで会った。
「はい」
楽しかった?
返事に少し時間がかかった。
「はい……。正直に言います、ものすごく楽しかったです。それまではラインだけだったから、実際に話したらどうかなって思ったんですけど、なんてことない話が本当に楽しくて、居心地が良くて、そのうちだんだん離れがたくなって」