性行為で、失ったものを取り戻したような気分になった

ただ、彼女の気持ちを全否定できない私もいる。誰かを好きになる。恋してしまう、それはどうにも抗えない心の在り方である。早い話、恋愛ほど、人に情熱をもたらす感情はないのだから。

しかし、その恋愛が知れてしまった時、ふたりの問題だけでは済まなくなる。自分が傷つくのは自業自得だが、傷つけてしまう人がいる。その現実から目を逸らしてはいけない。

セックスのことも聞かせて。

「信じられないくらいよかったです。夫とはずっとなかったし、私自身したいともあまり思っていませんでした。このまま枯れてゆくことにも、それほど抵抗はなかったんです。けれども彼とそうなって、セックスってこんなに気持ちよいものだったんだと驚きました。失ったものを取り戻したような気分でした」

もし、セックスがよくなかったら、気持ちは冷めたのだろうか。

「そんなことはありません。上手いとか下手とかじゃないんです。相性っていうか、好きな人とするセックスはやはり最高なんだと思います」

週1、2回の密会、2駅離れたホテルで待ち合わせた

どれくらいのペースで会うように?

「週に1、2回です。バレないように昼間、2駅離れたホテルで待ち合わせていました」

そうなって、あなたはどう変わったのだろう。

「毎日がこれまでとは違ってキラキラするようになりました。それまでの苛々や変な焦りも消えたし、夫にも前より優しくできたし、娘にも鷹揚に接しられたし、家事も楽しくやれて、家庭の幸せが実感できるようになりました。この状態が永遠に続きますようにって祈ってました」

うまくいっていたんだ。

「はい、1年くらいは順調に」

ということは、何があった?

「彼の奥さんが気づいたんです。どうやら以前から彼の行動を怪しんでいて、興信所に尾行を依頼していたようです。全く気付きませんでした。ホテルに入るところも全部撮られていました」

それを知った時はどう思った?

「彼から連絡を受けたんですけど、目の前が真っ暗になりました。本当に真っ暗になるんですね……。離婚とか、慰謝料とかが頭の中をぐるぐる回って、急に現実が押し寄せて来たっていうか、身体が震えました」

駅の改札口を行く人達
写真=iStock.com/bee32
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「キラキラした毎日」は終わりを迎えた

いつかそんな日が来ることを、覚悟していなかったのだろうか。

「最初の頃は注意していましたけど、まさかバレてしまうなんて考えてもいませんでしたから、気が緩んでいたのもあったと思います」

慣れというのは怖い。これぐらいは大丈夫、が、どんどん大胆になっていく。言い方は悪いが、モラルと警戒心は比例して低くなっていくようである。

その時、したことは?

「まずラインと写真の削除です」

証拠隠滅に走ったわけだ。

「ふたりで話し合ってそうしました」

あなたの夫にも知られたの?

「はい。彼の奥さんは、夫にも連絡を入れていたんです」

つまり彼の妻は、波風立たせず穏便に済まそうという気はさらさらなく、本気で戦おうと決めたわけだ。