「彼は私を選んでくれると思っていました」
「結局、彼は出てこなくて、3人での話し合いになりました」
彼の妻は何て?
「とにかく別れて欲しいということでした。二度と2人で会わないと念書も書いて欲しいと。それなら慰謝料は請求しない。ただ怪しいと思ったらまた興信所で調べるし、もし会ったとわかれば莫大な慰謝料を請求するって」
ということは、あちらは再構築を選択した。
「そのようです。それもショックでした」
とはいえ、あなたも夫に取り繕ったということは、再構築を望んだんでしょう?
「そうですけど、最後のところで彼は私を選んでくれると思っていました。いつかは一緒になろうって約束していたし、それなのに、どうしてって」
まるで被害者のように聞こえるが、彼女は加害者側であることを忘れてはいけない。
彼の妻も、その結論に至るまで悩み抜いたに違いない。そして再構築をするにしても、これからずっと夫に対する蟠りと向き合っていかなければならない。
崩壊した夫婦関係、形だけの家庭
あなたの夫はどんな結論を出したのだろう。
「夫は、あちらの奥さんが私に慰謝料を請求しないのなら、自分もそちらの夫に請求しないと言いました。絶対に会わせないよう、こちらでも見張るって。それからしばらくして彼らは引っ越していきました」
彼との関係は終わったわけだ。
「はい……」
今、夫とどのような状態に?
「離婚はしていませんが、再構築にも程遠くて。私はすごく反省したし、必死になって日常を取り戻そうとしているのですが、夫はたぶん、私に復讐するつもりでいるんです。これから娘の受験もあるし、家事にしても夫だけでは手が回らない、だからそれまでは形だけ家庭を保とうと考えているんだと思います。今は私を家に置くけれど、娘が無事に入学したら、別れるつもりなんです」
先の見えない状況だ。
しかし、そこまで夫を変貌させたのは彼女自身である。
「娘も何となく気づいたみたいで、最近は笑顔がなくなって、言葉がなくなって、時々、私を知らない人みたいな目で見るようになっています。針のむしろとはこのことをいうというくらいに息苦しい毎日です。PTAをやめても、スマホにはGPSが付けられているし、外出する時は前もって夫に時間や場所を報告することになっています。今日は友達と会うってことで出て来たんですが、きっと興信所をつけていると思います。家の中にも盗聴器が設置されているかもしれない。彼の奥さんもまだ私のことを見張っているかもしれない」