沖縄では複数の農家が熱帯果樹「ドラゴンフルーツ」を栽培している。完熟した果肉は甘く、自慢の農産物だが、国内では鮮度の悪い輸入品が流通しており、「味にがっかりする果物」と誤解されている。最近ではマツコ・デラックスさんと有吉弘行さんから「味付けしてない里芋」とテレビ番組で酷評されたこともあった。「いつか2人に食べさせたい」と訴えるドラゴンフルーツ農家の思いを、ジャーナリストの山口亮子さんが取材した――。
テレビで「味付けしていない里芋」と酷評
「マツコ・デラックスと有吉がテレビ番組で、ドラゴンフルーツを食べて『味付けしてない里芋』って言うんだよ。腹が立ってね」
「琉球紅龍果(ドラゴンフルーツ)研究会」代表の上間充信さんは、こう言って唇を尖らせた。「ドラゴンフルーツ名人」の異名をとり、読谷村の33アールで、ドラゴンフルーツを栽培する。
上間さんの両脇からは、その背丈と変わらないくらいに成長したドラゴンフルーツの木がしな垂れかかっていた。茎を激しくくねらせながら上間さんの方に向かって伸ばすさまは、その発言に「そうだそうだ」と同調しているようにも見える。
ドラゴンフルーツは国内では主に沖縄県や鹿児島県の奄美地方で栽培されるサボテン科の果実。その果皮は紫がかった鮮やかな赤色をしており、龍のウロコのような形をしていることから、名前が付いた。果肉は白いものと赤いものがあり、さっぱりした甘さで果汁が多く、みずみずしい。
輸入品は完熟前のもので鮮度も悪い
国内の年間生産量は100トンほどでそこまで多くなく、国産のほとんどは生産地で消費される。ここ数年で関東のスーパーにも並ぶようになったが、それらの多くはベトナムなど東南アジアからの輸入品だ。
店頭に並ぶまでのタイムラグを考慮し、未熟なまま収穫するため、味が薄くなりがちで、輸送に時間がかかって味が悪くなりやすい。筆者もかつてベトナム産のドラゴンフルーツを食べたことがあるが、国産のものと比べると明らかに果肉の水分量が少なく、おいしくはなかった。