「死にたい」「ファンだと公言しづらくなった」

最後に、この状況を受けてファンの心情について付記しておきたい。

報道が過熱するにつれ、筆者のもとにも見知らぬファンの方から「死にたい」「眠れなくなってしまった」というメールも届くようになり、報道初期にあった性加害の事実自体への動揺以上に、ジャニーズ叩きの空気への苦しみのほうが重いかのようでもある。

そして、ファンの中には自身にも加害意識を感じる人もいる。「ファンも共犯だ」「なぜ声を上げなかったのか」といった声をSNS上で目にし、自責の念を感じている。

ジャニー喜多川氏の性的嗜好は、氏の舞台を観れば演出やセリフから察することができた。ただ、確かな証拠はない。ましてや、その嗜好が性加害行為につながっていたことは知る由もない。今回、ファンも再発防止特別チームの発表で初めて公式に「性嗜好異常」という言葉で氏が「思春期少年を性愛対象」にしていたことを知ることになった。

ファンは、先の表現を使えばジャニーズの“善の華”しか見てこなかった。確証がない段階で何かいえば、仮に加害行為がなかった場合、それは氏の性的嗜好だけを勝手にさらす下劣な行為になる。そこまでは誰も踏み込めなかったのではないだろうか。

2023年10月2日、東京都千代田区(フォーシーズンズ ホテル大手町・グランドボールルーム)でのジャニーズ事務所会見
撮影=阿部岳人

「現場さえあればいい」という人も

ただ、実際の知人の範囲内では「ファンだと公言しづらくなった」という人はいたものの「ファンをやめようと思う」という人は皆無だった。

エージェント契約への移行に伴い、グループの形が変わる可能性があること、それに関連する報道には、大きく不安を抱いている。

一方、CMの契約解除やテレビ出演が減少するという報道に対しては「ショックではある」ものの「現場(コンサートや舞台などの実際にパフォーマンスを見られる機会=筆者注)さえあればいい」というスタンスが主流だった。

むしろ、この状況を受けて「さらに応援しなければ」と言う人も多くいて、それは例えば、YouTubeの『ジャにのちゃんねる』の登録者数が、更新の一時休止を発表したにもかかわらず増加したり、2年前に発売された、なにわ男子のデビュー曲『初心LOVE』がここにきて売り上げを伸ばすといった数字にも表れているようである。