プリゴジンの代わりはいくらでもいる

米公共放送のPBSも、ロシアの支配力は残るとの見方を取り上げている。現在のワグネルはより小規模な組織に分割されるが、引き続きロシア政府の下に置かれるという。

同局の報道番組「PBSニュースアワー」に出演した外交・防衛特派員のニック・シフリン氏は、「プーチン大統領はワグネル帝国を解体し、明らかに首を切り落としたようだ」と最新の話題に触れている。

続けて、「プリゴジンは自らを、人気者であり、必要不可欠な存在だと考えていた。そして、ウクライナであろうとアフリカであろうと、彼は個性と残忍さによってワグネルの多様な活動をまとめあげてきた」と、存在感あるプリゴジン氏を振り返る。だがその上で、「プーチン率いるロシアでは、ボス(プーチン氏)以外、誰一人として不可欠な存在ではない」と指摘。プリゴジン氏の代わりはいくらでもいるとの見方を示した。

共演した米シンクタンクのブルッキングス研究所のヴァンダ・フェルバブ=ブラウン氏も、アフリカ各国の政府はロシア依存から脱却できないとの見解を示した。ワグネルの今後についてブラウン氏は、ロシアはアフリカにおけるワグネル帝国を解体した方が管理しやすくなると指摘した。

ブラウン氏によると、複数の会社や人物に置き換えられる可能性が高いという。実際、例えばシリアでは、ワグネル部隊がロシア軍に編入され、ワグネルの指揮官がロシア軍の指揮官と交代しているという。ワグネルには政府への警護サービスから誤情報の流布までを一括して行う「スーパーマーケット」としての利点があったが、プーチン氏としては二度とこのような帝国の存在を許したくないだろう、とブラウン氏は語る。

ワグネル依存を止められない中央アフリカ

中央アフリカでは、ワグネルとの関係は続きそうだ。現地ではワグネルへの依存が強く、にわかに関係から抜け出せない現状がある。中央アフリカ共和国のトゥアデラ大統領は、ロシアへの感謝を明確に表明している。ワシントン・ポスト紙は親ワグネル色が濃い理由として、内政不安の解消にロシアが貢献したことを挙げている。

トゥアデラ大統領は同紙のインタビューに応じ、2016年に大統領に就任した際、全土の90%が反乱軍に支配されていたと振り返る。政府は首都防衛のための兵器を必要としていたが、過去2013年に反乱軍が政府を転覆したことを受けて国連が禁輸措置を敷いており、入手が困難であったという。そこへ「親切にも援助を申し出た」のがロシアだ。

トゥアデラ大統領は「フランスやアメリカではなく、ロシアが『親切に』援助を申し出た」と強調する。2018年には、ロシアから指導者たちが兵器の使用方法を教育するために送り込まれ、のちにそれがワグネルであることが明らかになった。2020年に反乱軍が政府転覆をもくろんだ際は、さらに多くの兵員がワグネルから派遣された。こうした事情を経て、現在でも政府関係者たちは、ワグネルの戦闘員によって首都バンギが救われたと捉えているのだという。