記事は、「ワグネル・グループがロシアの影響力を増大させ、アフリカで親欧米政権に対する抗議を扇動し、制裁の回避を助け、クレムリンが(アフリカへの直接的な介入を)否認できるようにするための曇りガラスのようなものだった」と論じる。

同紙によると、商売の実態を不明瞭にするためにプリゴジン氏は、「いくつかの巧妙な手段」を用いていた。まず、取引の多くは、厳重な管理を受けたペーパーカンパニーを経由して行われた。

見返りは現金払い、天然資源の利権で荒稼ぎ

また、協力者に対して常用された手段として、多くの労働者や傭兵から、料理人や学者に至るまで、報酬は好んで現金払いとした。政府から直接現金を受け取るため、自身のプライベートジェットで出向くことさえいとわなかったという。

米超党派組織の外交問題評議会は、「ワグネルのサービスは、反政府勢力や政権を含むクライアントのニーズによって異なり、その資金源は直接支払いから資源の利権まで多岐にわたる」と指摘する。

たとえば2018年、中央アフリカのフォースタン=アルシャンジュ・トゥアデラ大統領政府を防衛するべく、ワグネルの兵士約1000人が中央アフリカ入りした。ワグネルの子会社は見返りとして、制限のない森林伐採権と、高い利益を出しているンダシマ金鉱の管理権を得た。また、2017年以降のスーダンでは、スーダン軍の訓練などの見返りとして、金の輸出を受けている。

こうして、送金記録による把握が難しい手段で見返りを受ける手法を常用していた。

ボツワナのダイヤモンド鉱山での採掘
写真=iStock.com/poco_bw
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無関係に見える金鉱も木材輸出も、すべてワグネルにつながっている

ダミー会社もプリゴジン氏お得意の手法だ。CBSニュースは、ワグネルとプリゴジン氏が暴力、偽情報、そして煙幕の役割を果たす「ペーパーカンパニーの銀河系」を駆使し、取引を隠蔽していたと報じている。

記事によれば、プリゴジン氏は中央アフリカの鉱物資源を支配し、それがワグネルの活動の財源になっていた。独立系情報会社のグレイ・ダイナミクスはCBSに対し、中央アフリカのンダシマ金鉱はワグネルの25年間の採掘権の下で運営されていると指摘する。だが、金鉱はプリゴジン氏が関与するペーパーカンパニーである、ミダス・リソースの名の下で運営されている。

さらに、採掘した金をロシア首都へと直接運び出す際にも隠蔽工作が施された。ワグネルは飛行機のトランスポンダーをオフにし、レーダー上での識別を困難にした。こうして税関の規制が緩いアラブ首長国連邦に降り立ち、貨物を積み替えていたという。