昔から自由が好きだった

俺は昔から束縛されるのが好きじゃなくて、自由な立ち位置をずっとキープしていた。

はるか昔にさかのぼって走り屋のリーダーだった学生時代も、自らやりたかったわけではなく、流れでトップを任されただけだった。

もともと集団行動があまり得意じゃないから、集会に行ってはいたけどピンでの参加。徒党を組む感じじゃなかった。何人かリーダーになりたいヤツがいて、俺はたまにお客さん的に見にいっただけ。それなのに、なぜかリーダーに選ばれてしまった。

おそらく、あちらを立てればこちらが立たずで、誰を選んでも不満分子が出てきてしまう。俺のような、昔でいうノンポリ、つまりノーポリシー、ノープランのような人間がリーダーになれば、立っていた角もとれて丸く収まるんじゃないかと、先輩たちは考えたのかもしれない。

この立ち位置は新日本プロレスでも同じで、ほかにも適任の人間がいたはずなのに、選手会長とか現場監督を長くやらされたんだよね。

プロレスの経験はすべてのビジネスに活きる

世の中のあらゆるビジネスは千差万別に見えて、「人と人」が行うものであることに変わりはない。だから、そこには共通した商いの法則や成功法則がある。

プロレスとは全然関係のないアパレルの会社を立ち上げたとき、正直、プロレスの経験なんてクソの役にも立たないと思っていた。でも、実際はまったくそんなことはなかったんだ。

それを教えてくれたのが、俺の周りにいる経営者たちだ。

プロレスファンの経営者たちから、プロレス特有の駆け引きや話題のつくり方がすごく参考になると言われたんだよね。

駆け引きや話題というとわかりにくいので、「ストーリー性」とでもいうのかな。

プロレスでは、シリーズを通して、あるいは年間を通じて、それぞれの選手たちの戦いのテーマっていうのがある。メインイベンターや主力選手たちの紡ぐストーリーが団体の中心だけど、それ以外にも抗争や因縁、裏切り、友情など、あらゆるストーリーが張り巡らされていて、そのストーリーを追いたくてファンは見続けているわけだ。

戦う二人のレスラーと審判
写真=iStock.com/viafilms
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ストーリーによっては数年、数十年越しの、まさに大河ドラマみたいな物語になることもある。でも、これって実はプロレス業界に限ったことじゃない。

どんなビジネスにも「ストーリー」が大事なんだ。

繁盛しているラーメン店、IT企業なんかでも、ホームページを見てみると創業者がいかにしてこのラーメンのスープの味にたどり着いたか、あるいは思いがけない人との出会いから、これまでにないアイデアが生まれ会社設立に至った……なんていうストーリーが載っていることが多いし、新商品の開発秘話なんかも見る機会がすごく多い。

提供する商品やサービスが似たり寄ったりの場合、そこにドラマチックな物語をプラスすることで価値が上がる。これが今の時代の売れ筋なんだ。

どんな企業も今や“物語”や“ストーリー”に飢えていて、その絶好のヒントがプロレスなんだそうだ。

プロレスだけじゃない。自分が今までしてきた経験、仕事をどれだけストーリー化、ドラマ化できるか。自分のやっていることを、ふだんからちょっと客観的な視点で見るクセをつけておくと、この先、違う業種にいってもそれが大きなヒントになると思う。

酸いも甘いもかみわけた50歳ならなおさらだよ。