「保護犬・保護猫の譲渡」を名乗る悪質商法もある

熱心に猫を見つめる来場者の中には「飼っていたペットが死んでしまって……」という人がちらほらいた。「新しいペットを迎えたい」と考えた時、「保護猫」が選択肢にあがり、今日ここに来たというわけだ。

ペットショップで犬や猫を「購入する」と、保護した犬や猫を「譲渡してもらう」は具体的にどう違うのだろうか。

費用は譲渡のほうがおさえられる。ペットショップでは購入にかなりのお金がかかるが、譲渡の大半は数万円だ。猫に対して値段はつかず、譲渡するまでにかかった餌代やワクチン接種、ウイルスチェックなどの医療費の一部を譲渡対象者に請求するケースが多い。「あまみのねこひっこし応援団」では、2万数千円から3万円弱という。

ただし、ペットショップの売れ残りやブリーダーの繁殖犬や猫を「保護猫」「保護犬」と呼ぶ業者もいる。

「“保護犬・保護猫の譲渡”という名前を使い、犬猫自体に値段はつけなくても、抱き合わせでフードを一緒に購入する必要があったり、保険に入らなければいけなかったり。そういったものは本来の譲渡ではありませんので注意してください」(あるボランティアさん)

「あまみの猫引越し応援団」の団長を務める齊藤獣医師(右)
撮影=笹井恵里子
「あまみの猫引越し応援団」の団長を務める齊藤獣医師(右)

1週間は「猫の様子」をLINEで報告する義務が

きちんとした譲渡のハードルは高い。各動物愛護団体が独自の基準を設けていて、例えば高齢者は「譲渡不可」となるケースが少なくない。いまや飼い猫の寿命は20歳以上になるため、飼い主の寿命を超えてしまったり、高齢や病気などの事情で飼育が難しくなったりすることがあるためだ。

年齢などのハードルをクリアしても、譲渡してもらえるとは限らない。

「あまみのねこひっこし応援団」の場合は、里親希望者が「申し込み」を入れると、スタッフから具体的な説明を受けることになる。その際、スタッフは飼い主の“人となり”を見る。面談を通じて、「この人に猫を託せる」とスタッフが判断すれば、後日スタッフが直接里親の家に猫を届ける。それから一週間を目安にトライアル(試し飼育)を行う。その間、里親は毎日猫の様子をLINEで報告しなければいけない――。

それを聞いて正直、私は面倒だと思った。本当にその猫が好き、飼いたいと思えなければ、やっていられないだろう。