「開発競争過熱」で世界陸連が厚さを40ミリ以下に規定
しかし、メーカー間の開発競争が過熱したことを受け、2020年にワールドアスレティックス(世界陸連)が、ランニングシューズにまつわるルールを策定する事態に発展しました。
ロード用のランニングシューズ(トラック用のシューズは別基準)には、ソールの厚さが40ミリメートル以下、プレートの搭載は1枚までといった規制が設けられ、以降、トップアスリート用のレーシングシューズは、そのルールに基づいて開発されています。
競泳で特定の水着を着用した選手のタイムが軒並み向上したことを受けて、2010年に国際水泳連盟が水着に関する新ルールを策定したことがありましたが、それと同様のことがランニングシューズにも起こったということです。
このことからも、厚底シューズ登場のインパクトの大きさが、よくわかるかと思います。
あらためて、厚底シューズと薄底シューズを比べてみましょう。
もちろん、メーカーによって違いがあり、すべてのシューズが該当するわけではありませんが、大まかな特徴を捉えるイメージで読んでもらえたらと思います。
接地感は得にくいがスピードは出しやすい
薄底シューズは文字どおり、ミッドソールが薄いため、当然、地面と足との距離は近くなります。
そのぶん、接地感を感じやすく、ランニング時に地面をとらえている感覚や、地面からの反発を得ている感覚は得やすいでしょう。また、着地時のブレが少なく、安定性が高いともいえます。
一方、ミッドソールが薄いぶん、シューズ自体がもつクッション性や反発性の機能は、厚底シューズと比べるとかなり低いといえます。
良くも悪くも、着地の衝撃は自身の関節などの機能をうまく使って緩衝する必要があります。脚への負担は、薄底シューズのほうが大きなものになるでしょう。また、厚底シューズと比べると、使用されるパーツが少ないぶん、シューズ自体の重量は軽くなります。
前述したように、現在、厚底シューズのソールの厚さは40ミリメートル以下ですが、多くのトップレーシングモデルは、ギリギリの厚さで設計されています。そのため、厚底シューズを着用した場合、もっとも厚みのある後足部は地面から40ミリメートル近く離れます。
薄底シューズと比べると、接地感は得にくく、着地時の不安定さはいくらか増すことになりますが、シューズ自体がもつクッション性、反発性といった機能は高くなります。
カーボンプレートの搭載によって、反発性、安定性が高められており、薄底シューズと比較すると、多くのランナーが継続的にスピードを出しやすいと感じるでしょう。
いま現在、ほとんどのトップアスリートが、レース用に厚底シューズを選択している状況です。