「見えにくい」学校徴収金以外の家庭負担
修学旅行にかかる費用は積立金だけでは足りない。教職員からは「見えにくい」保護者の費用負担もある。それぞれの家庭が用意するもの、いわば現物持参品である。
まず、大きめのバッグが必要だ。単身旅行に慣れている子どもは少ないだろうし、このタイミングで購入する場合が多い。旅行用の洗面用具やタオルなども同様に考えられる。また、旅行先で着用する衣類を新調することもあるだろう。着古したパジャマを持参する家庭は少ないようだ。中学校の場合は、体操着やジャージといった、学校生活でも使用している衣類を指定している場合もある。旅行先で洗濯をする行為は想定されないため、買い増しが必要になる家庭も多く、それを見越して学校が斡旋販売することもある。
修学旅行はなぜ高いのか
旅行には「募集型企画旅行」(パッケージツアー)と「受注型企画旅行」(オーダーメイドツアー)がある(旅行業法)。前者は旅行会社が目的地や日程、宿泊先などと費用を定めた旅行であり、後者は旅行者の依頼に応じてそれらを定めた旅行となる。そのため、後者の場合は、旅費のほかに旅行企画料金(旅行費用全体の10%前後)が加算される。
修学旅行は、学校が発注して旅行業者が受注する旅行であり、「受注型企画旅行」の部類になる。
単純な比較はできないが、大手旅行メーカーのウェブサイトで首都圏から京都・奈良に向かう募集型企画旅行(修学旅行と同様に2泊3日、朝夕食付)を検索してみると、4万5800円であった。前述の、『隠れ教育費』に例示されている中学校の修学旅行積立金(6万6200円)より約2万円も安い。これに現地での交通費や昼食代、拝観料や入場料などを加えたとしても、その差はなくならないだろう。しかも、修学旅行は学生団体割引が適用され、新幹線の料金は50%OFF(JR)になるが、それでも旅行代金は高くなるのだ。
単純な旅行代金(交通費や宿泊費)以外にも高額となっている理由がある。たとえば、班別行動のタクシー使用、鉄道移動も可能だが貸切バスを使用、アミューズメント的施設の利用などである。卒業記念旅行として「お祝い」色が強まることや、過度の安全対策が費用を増している。
貸切ジャンボタクシーで班ごとに各名所をまわる場合、5~7時間の貸切が多い。時間によって料金が変わり、1台4万~6万円程度の費用がかかるため、それを乗車人数で除する。ひとりあたり、6時間で8000円程度の費用が必要となる。
学校側は、タクシーを利用することで、安心して生徒たちを班別自由行動に解放できる。交通機関の乗り継ぎより、タクシー移動は安全性が高いのだ。さらに運転手がガイド役もしてくれるというお得感にひかれる学校も多くある。