貸切バスや遊園地の費用も

移動費1000円弱で済む鉄道(他利用者と共有)ではなく、3000円強をかけて貸切バス(関係者の専有)を使う場合も多い。他利用者とのトラブルや事故、事件などを回避するために後者を選択したくなる気持ちはわかるが、学習効果や費用負担を考えると再検討の余地はあるだろう。

さらに、アミューズメント施設の利用にも目を向けたい。地方からの修学旅行では、千葉県や大阪府、長崎県などの大型アミューズメント施設を利用することも多いらしい。子どもにとっては歴史的名所めぐりよりも「たのしい」と感じやすい。さらに、アミューズメント施設では、修学旅行客をターゲットにした「修学旅行料金パック」や「修学旅行限定ランチ」が生徒たちを出迎えてくれる。こうした企業努力が修学旅行を支えているとも考えられるが、そのことが修学旅行本来の目的達成を遠ざけていないか――悩む部分もある。

「先生は楽をしている」という誤解

このようにみてくると、修学旅行の引率(教員)はずいぶん楽をしている、という誤解を招いてしまうかもしれない。

実態としては、修学旅行に関わる担当教員の負担はとても大きい。「修学」旅行であるから、かなりの時間を割いて事前学習を行う必要がある。下見にも行き、晴天時だけでなく荒天時の行動案も考える。あらゆる事故を防ぐために万全の対策をとり、不測の事態には学校に残っている教職員とどのように連絡を取り適切な判断をするかというシミュレーションまで行う。

修学旅行の引率にあたっては、規定の特殊業務手当が後日支給されるが、その額は1日あたり5100円(千葉県・埼玉県の場合)となっている。修学旅行引率時は、通常と異なる環境で、浮足立つ生徒らのトラブル回避やアレルギー対策など、安全管理に24時間体制で取り組んでいるにもかかわらず、この5100円を超える特別な手当はない。

X(旧・Twitter)上では、「夜も眠れず対応する教員が手当どころか自腹を切らされる」という恨み節も渦巻く。

交通費や宿泊費については基本的に支給されるが、訪問先の入場料は旅費支給の対象外となることもある(免除の場合もある)。また、生徒らと共に食べる昼食代は、自己負担のこともある。入場しても、教職員自身は展示やアトラクションを楽しむわけではなく、生徒の様子をひたすら見守るだけだ。自分が食べたいものを選べるわけではなく、割高な食事をかきこむように食べる。そのため、入場料や昼食代への不満は多い。

このように、修学旅行は保護者にも学校にもかなりの負担を強いながら維持されてきている。特に、教職員の労働負担・経済的負担は見えにくいが甚大だ。コロナ禍で修学旅行の実施率が急降下する以前から、「それでも修学旅行に行くべきか」という議論が提起されてきたのは、こうした理由が大きい。