「共産党末端組織の利権化」は不可避
これまでの以工代賑では「複雑な技術が必要で、適宜入札が行われるプロジェクト以外は、入札制度を実施しなくてよい」とあり、実際はほとんどが適宜入札で行われてきた。
ただ今回の改正で「入札を一切しなくてよい」となると、おそらくは郷鎮、村の幹部たちとコネがある業者が、貧しい村民を組織し研修し、報酬を管理することになる。
審査も結局、共産党の末端組織が担当するとなると、従来からの汚職構造の中に落とし込まれることになるだろう。
そもそも、入札があっても様々な汚職が起こるのだから、入札をなくせば、地方のレベルの低い共産党末端組織の利権になることは避けられまい。
中国の労災は非常に多い
また、改正法の28条では、「人の手でできることはできるだけ機械を使用せず、民衆を労務者として組織し、できるだけ専門の施工チームは使わない」と要求しているが、これも地方レベルの共産党末端組織の利権化を助長しかねない。
また、プロジェクトのクオリティや労務者の安全が軽視されることにならないか、という見方もある。
機械や熟練の専門施工業者を使わず、地元農民を使えということは、農民を酷使せよ、ということと同じであり、結局のところ労働者の権益保護にはまったくつながっていない。
しかも、この労務報酬の割り当てについては、共産党末端組織が決める。
となると、郷鎮、村の幹部たちが懐に入れ、末端の農民は低賃金ということになりはしないか。
もちろん中国の労働法でも残業代や最低賃金の規定があるが、多くの現場では無視されている。地方のインフラや施設建設の現場では、労働者の負傷や死亡などの労災は非常に多い。肉体の酷使を要求されて注意力が散漫になったり、外国なら機器や安全設備の補助によって行う作業も、体一つで行わせる場合があるからだ。