人間の医者よりChatGPTのほうが「親身」

それから優に半世紀以上も経過した2022年に登場したChatGPTは、かつてのエライザとは比べ物にならないほど卓越した理解力と膨大な知識、そして驚異的な言語能力を備えています。

米国医師会が発行する内科専門誌「JAMA Internal Medicine」に発表された調査結果によれば、人間の医師が患者に話す言葉が「親身に感じられる(empathetic)」と評価された割合は全体の僅か4.6パーセント。これに対しChatGPTが患者に話す言葉が「親身に感じられる」と評価された割合は45パーセントに達しました。実に10倍もの開きです。

つまり患者はつっけんどんな医師よりも、親身になってくれるChatGPTと話しているほうが心が安らぐという結論になったのです。

「危険な人工知能の子孫」がパートナーになる未来

このChatGPT、さらにマイクロソフトのビングやグーグルの検索エンジンに搭載される対話型AIは今後パソコンのデスクトップやスマホ画面、あるいはスマートTVや自動運転車のダッシュボード等に常駐して、広く社会全体に浸透していくでしょう。

小林雅一『AIと共に働く―ChatGPT、生成AIは私たちの仕事をどう変えるか―』(ワニブックスPLUS新書)
小林雅一『AIと共に働く-ChatGPT、生成AIは私たちの仕事をどう変えるか-』(ワニブックス【PLUS】新書)

やがて、それらのAIは日常の暮らしや仕事の単なるツールというよりも、ある種の疑似人格を持ち、精神的なサポートも提供してくれるパートナーになるかもしれません。

この新種のパートナーは人間よりも優しく親切で、気が利いて、物知りで、どんな無理難題にも嫌な顔一つせず相談に乗ってくれます。

しかしそれはまた、今から半世紀以上も前の有能なAI研究者(前述のワイゼンバウム教授)が警鐘を鳴らした危険な人工知能の子孫でもあるのです。

そういうものに依存せざるを得ない時代へと、私達の生きる世界は向かっているようです。

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