※本稿は、松乃わなり『「休め!」のポーズで死ぬまで歩ける骨盤のつくり方』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
悪い姿勢が身体の不調を引き起こす
誰もが、猫背などの悪い姿勢が体のゆがみを生み、肩こりや腰痛など身体の不調を引き起こす原因になるということは知っていると思います。
ですが、いざ正しい姿勢=“気をつけ”の姿勢を続けようと思っても、気がつくと猫背になっていたり、姿勢が崩れていたりと、なかなかその姿勢をキープできないのではないでしょうか。
実は、“気をつけ”の姿勢は、意外と疲れます。だから無意識により楽な姿勢を取ってしまうのです。
なぜ、“気をつけ”の姿勢は疲れるのでしょうか。
まず、人間の体は、一番上に大きな頭が乗っています。その重さの比率はだいたい体重の10%くらい、成人男性で約5~6キロだと言われていますので、ボウリングのボールがひとつ体の上に乗っているような状態です。
しかし、建造物の観点で言うと、もっとも重いものが上に乗っている構造というのはあり得ません。スカイツリーでも民家でも、下を大きく、上を軽く作るのが常識です。そのほうが安定するからです。
人類は、頭が大きくなり二足歩行に進化したおかげで、脳が大きく発達し両手が使えるようになるなどのメリットを享受できました。しかし、その代償として、立っているときに不安定な状態を生み出してしまったのです。
気をつけの姿勢が疲れる理由
つまり、人間の体は上を重く作ってしまったビルのようなものですから、まっすぐに立った時に揺れに弱いわけです。じっとしようとしても、呼吸などによって体は常に前後左右に不規則に揺れています。
その細かな揺れを制御しているのが、体の中の各筋肉です。
たとえば、左方向に揺れれば、体の右側の下腿や大腿、腹部、胸部、首などの筋肉が姿勢を保つように縮んで引っ張ります。前側に揺れれば後ろ側の筋肉が、後ろに揺れれば前側の筋肉が縮むというように、反対側にある筋肉同士が互いに伸び縮みしながらバランスを取っているのです。