メガネの度数は「自分の使い勝手」で選ぶ

ここまでの話で、メガネは目を甘やかし、衰えさせるツールではなく、視力に合わせて目をサポートしてくれる便利ツールだということが、おわかりいただけたかと思います。根性論で、いくら「メガネなし」でがんばってみても意味がないのです。

すでに述べたように、「近視の進行具合」と「メガネの度数」には相関がないので、メガネの度数は個々の使い勝手に合わせてかまいません。いってみれば「鉛筆とボールペン、どちらのほうが自分は書きやすいか」というような話です。

例えば「パソコンを使う仕事なので、視力にピッタリ合わせた度数のメガネ(コンタクトレンズ)だとクラクラしてしまう」ということなら、少し弱めの度数に調整してもらうのもありでしょう。

もちろん前の項でお話ししたように、「1時間ごとに、できれば6メートル、難しければ2メートル以上遠くを20秒間ほど見る習慣をつける」ことをお忘れなく。

老眼鏡を使い始めるベストタイミング

一方で、老眼鏡は、老眼になったらすぐに使い始めるのが得策です。これは今後の老眼の進行度合いなどの問題ではなく、「慣れ」の問題です。

遠近両用になっている老眼鏡は、慣れるまでに少し時間がかかります。そして「ものがちゃんと見えるかどうか(ツールとしてのメガネを使いこなし、ものがちゃんと見えるかどうか)」は日々の生活に大きく影響します。

60代、70代になってから使い始めるのではなく、早々に遠近両用に慣れ、使いこなせるようになっておくことが、その後のクオリティー・オブ・ライフを左右するといっても過言ではありません。

メガネと新聞
写真=iStock.com/Toru Kimura
※写真はイメージです

老眼に年齢は関係ない

そもそも「老いた眼」という言葉が誤解の元なのですが、世間では目の老化現象の一つとして認識されている老眼は、実は高齢者だけのものではありません。

高齢になると罹患りかんするものというイメージがある目の疾患には、若い人でも罹患する可能性があるものも少なくありません。例えば白内障一つをとっても、糖尿病があれば30代などでも「糖尿病性白内障」にかかるリスクがあります。

また、放射線被ばくを要因とする放射線白内障(水晶体混濁)や、アトピー性皮膚炎などに使用されるステロイド製剤の多用を要因とするステロイド性白内障など、加齢ではない外的要因が絡んでいる白内障は、その要素があれば年齢を問わず発症します。

白内障ならば、今のような説明をすることで年齢に関係なく罹患する可能性があると理解していただけるのですが、老眼はなかなか納得いただけないことがあります。その字面から、一般的には、どうしても高齢者がかかるものという認識が抜けないようなのです。

この一般的な思い込みは、そもそも老眼とは何かをご理解いただければ、払拭されるかもしれません。