「スマホ老眼」になる若者が増えている。眼科医の平松類さんは「老眼は、目の老化現象の一つとして認識されているが、高齢者だけのものではない。スマホの長時間利用で目のピント調整機能が低下し、10代・20代の若者が老眼鏡をかけるケースもある」という――。

※本稿は、平松類『眼科医が警告する視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

眼科医の2人の子供を持つ母親は目の検診を受けました
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根性論から生まれた大勘違い

「メガネを使うと近視が進む」というのは、都市伝説級に根拠のない話です。似たようなもので「老眼鏡をかけると老眼が進む」というのも完全なる誤解です。

こんな説がまことしやかに伝わってきた根っこには、根性論があるのでしょう。近視も老眼も、目を鍛えることで進行を食い止められるはず。ものを見やすくするメガネを使うのは目を甘やかすことであり、それでは目が鍛えられない。見えづらくても見ようとすることで目が鍛えられる──。

実は眼科専門医の間でも、以前はこのように信じられている節がありました。現状の視力にピッタリ合わせた度数よりも、少し弱い度数でメガネを作るのも、当時は当たり前だったようです。

しかし視力は筋肉とは違います。鍛えれば能力が上がるという性質のものではないので、弱っているのなら相応にサポートしてあげる必要があります。

現に、視力にピッタリ合わせた度数のメガネを使うグループと、少し度数を弱めに調整したメガネを使うグループとで経過観察をした臨床実験では、「両者において近視の進行具合に違いはない」という結果が出ているのです。

つまり、「近視の進行度合い」と「メガネの度数」には相関がないということ。ピッタリ度数を合わせたメガネを使うことは、目を甘やかし、近視を進めることにはつながらないのです。

遠近両用メガネが近視の進行防止につながる

近年では、むしろ遠近両用のメガネやコンタクトレンズを使っていると、ごくわずかながら近視の進行が緩和されると新たに指摘されているのです。

専用の遠近両用メガネ(コンタクトレンズ)は、手元を見るときでも、手元を見ていないような目の状態に自動的に調整してくれます。近視を進行させる最大の要因は、近距離でものを見ることなので、その状態を生じさせない遠近両用メガネ(コンタクトレンズ)が、近視の進行防止につながるというわけです。

まだ日本ではあまり普及していないのですが、中国などでは近視の進行防止の目的で、大人だけでなく子どもにも、近視抑制専用の遠近両用のメガネやコンタクトレンズを処方する医師が増えてきています。

ただし、「メガネをかけたくないから近視の進行を食い止めたい」という人にとっては、「近視の進行を食い止めるためにメガネをかけなくてはいけない」という点がジレンマになります。近視の進行防止策としての遠近両用メガネ(コンタクトレンズ)が普及しない理由も、そのあたりにあると考えられます。