老眼の実態は、ピント調整機能が低下
ひとことで言うと、「老眼」とは、遠くを見たり近くを見たりする際にピントを合わせる機能が落ちている状態です。
ピント調整機能が落ちている目(老眼)とピント調整機能が落ちていない目の違いは、「ものが見える距離のレンジ(幅)」です。
ここが混同されやすいのですが、ピント調整機能をまったく使わない「安静状態」で「近く」だけ見えるのは近視、「安静状態」で「遠く」だけ見えるのは遠視です。
この区分を明確にしたうえで、老眼に話を戻しましょう。
すでに述べたように、老眼はピント調整機能が低下しているということ。もう少し詳しく言うと、「安静状態」から、どれくらい手前までが見えるかという距離の幅が狭くなってくるということです。
老眼は20代から進行する
老眼(ピント調整機能不全)とは、見える距離の幅のレンジが狭くなるということ。
例えば、ある近視の人が、40歳くらいまでは1メートル先から10センチメートル先まで見えていたのに、45歳になったあたりから、1メートル先から20センチメートル先までしか見えなくなったとしましょう。
そのため、今までは遠くを見えるように矯正する近視用のメガネで遠くも近くも見えていたのに、そのメガネだと20センチメートルより近いところが見えなくなってしまった。これはまさしく老眼の始まりです。
ピント調整機能は、一般的には、10代で8センチメートルまで、20代で10~12センチメートルまで、30代で14~20センチメートルまで、40代前半で25センチメートルまで見え、それが45歳では30センチメートルになるとされています。
このように、ピント調整機能の低下は20代から進行します。ただ、実際に「手元が見えなくて本が読みづらい」などの不調を自覚するのが40代以降であり、それまでは不便を感じないから「若いうちは老眼にならない」と思い込んでいるだけでしょう。
特にスマートフォンが普及してからは、長時間利用することでピント調整機能が低下する「スマホ老眼」が若い世代でも増えています。
10代・20代で、45歳以上の人が作るような老眼鏡が必要になってしまったケースも、私はすでに多く目にしてきました。
老眼を「老いた目」ではなく、加齢だけに限らない何らかの理由で「ピント調整機能が低下した目」と捉えれば、決して中年以上だけのものとはいえないのです。
子供の学習障害の原因になるケースも
老眼、もとい「ピント調節機能不全」は、加齢やスマートフォン以外にも、例えば神経系が麻痺する薬を飲んでいる、体調不良である、ガンなど重篤な病で薬を服用している、といった人たちにも起こりうるものです。
スマホ老眼の例でもわかるように、日ごろのライフスタイルや生活環境、あるいは何かしらの先天的な体質や病気によって、誰にでも、何歳であっても生じる可能性があります。
例えば、小学生のお子さんが授業に集中できない、ノートを取れない、教科書を読めないといったことで、学校で問題視されていたとしましょう。真っ先に指摘されるのは、性格的な問題や、いわゆる発達障害の可能性ですが、実はそれ以外に、「何らかの理由で目の調整機能不全が生じており、手元がよく見えないから」という理由も考えられるのです。
手元がよく見えないためにノートをちゃんと取れない、教科書を読めない。だから授業に集中できない。しかし視力検査では1.0などで「視力に問題なし」と出る。つまり遠くは見えているため、周囲に気づかれづらいのが難しいところです。
小さな子どもは、まだ自分の不調を正確に訴えるすべをもちません。
本当は手元が見えづらいことが原因なのに、「なぜ教科書が読めないのか」「なぜノートを取れないのか」と問われても、うまく答えられない。「つまらないから」などと適当に答える場合も多いでしょう。
でも、「メガネ(老眼鏡)」一つで解決するかもしれないわけです。この点を周りの大人が理解していないと、クラスを移されたり、集中力を上げる特別カリキュラムを組まれたりと、それこそピントの外れた策によって、子どもを無用に苦しめかねません。