マグロ漁船は「きつい」のコスパが良すぎる

とあるご縁があり、マグロ漁船員として1カ月労働しました。

なぜやろうと思ったかというと、過去に都市伝説で「借金が返せなくなると、内臓を売るかマグロ漁船に乗るかの二択を選ばされる」という話を聞いたことがあったからです。

「内臓を売る」のは、誰が考えてもきつい体験です。

しかし、「マグロ漁船に乗る」ことは、その並列の選択肢になるくらいきついらしいのです。

「内臓を売らずに、内臓を売るのと同じくらいきつい体験ができる」のは、「きつい」のコスパがあまりに良すぎるのでやるしかないと思いました。

マグロ漁船には、今まで出会ったことがないような、私にとって珍しい人たちが乗っていました。

母国にいる家族のために出稼ぎにきた外国人、「勉強が嫌で、なんかもう漁業で一獲千金を狙いたい」という野心を持った地元の青年など。

その中でも特に印象に残っているのは、「バナナしか食べられない、超偏食なパナマ人男性」です。

バナナをむいている手元
写真=iStock.com/yipengge
※写真はイメージです

漁船内での食事は、その漁でとれたあまり美味しくないマグロの部位だけで作られたマグロ丼です。

彼が超しんどそうだったので、私が持ち込んだ「ソイジョイ バナナ味」を1本2000円で買わないかと持ちかけたところ、取引が成立してしまいました。

その土地において、需要と供給さえ一致していれば、あり得ない価格での取引も成立するのです。

富士山の上では、ミネラルウォーターが高値で販売されるのと同じです。

人間は、自分の強い欲求のためにはいくらでもお金が出せるということがわかりました。

特に食欲、睡眠欲、性欲の三大欲求はやはりアプローチしやすいようです。

バナナ好きパナマ人が2000円でも納得感があった理由

また、「ソイジョイ バナナ味」が1本2000円の値段がついた理由として、需要と供給が一致していた以外にも、そのパナマ人男性が「ソイジョイの通常価格を知らなかった」のもあると思います。

神山理子『女子大生、オナホを売る。』(実業之日本社)
神山理子『女子大生、オナホを売る。』(実業之日本社)

本来、コンビニやドラッグストアなどで100円程度で購入できる商品です。

しかし、私が「これはものすごく美味しい! 個人的には、デパ地下で買うお菓子よりも好き」と言ったので、彼の意識の中では「デパ地下のお菓子より美味しいということは、定価が高いものなのかな?

今、どうしてもバナナ味のものが食べたい中、食料が限られている船の上ではこの高い値段なのも仕方ない」という認識や納得感があったそうです(船を降りてから、彼に種明かしをして謝罪と返金をした際に聞いたら、そう言っていました)。

ここから、本書でご紹介した「強い欲求への解決策は高く売りやすい」ことや「相場が知られていないものは高く売りやすい」ことを身をもって学びました。

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