「インボイス制度開始」という新たな難題

内閣改造が終わり、秋の臨時国会が始まれば、再び、マイナンバー問題の野党による追及が再開する。NHKの世論調査では9月の内閣支持率は36%と3ポイント改善、とりあえず一服状態だが、これがどう動くか。来年秋の自民党総裁選で再選を狙う岸田首相にとってマイナンバー問題はアキレスけんであり続ける。

そこにもうひとつ難題が加わる。消費税のインボイス制度が10月1日から開始されるのだ。「適格請求書発行事業者」として登録し、その番号や消費税額を明記した請求書を発行する仕組みで、モノやサービスを購入するために代金を支払った側はこの適格請求書(インボイス)が無ければ、その消費税分を税額控除することが原則できなくなる。飲食店なども登録番号などを明記した領収書(適格簡易請求書)を発行することになり、それをベースに税額控除を受ける。つまり、売り上げに伴って受け取った消費税(仮受消費税)から経費として支払った際の消費税(仮払消費税)を差し引いた金額を納税することになる。

TAXと書かれた木製のブロックとコイン
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インボイス制度は「増税策」であることは間違いない

すでに課税業者の多くは適格請求書発行事業者として登録を始めており、6月末時点でおよそ300万ある課税事業者のうち8割を超える事業者が登録を済ませたという。個人事業主の課税事業者も7割以上が登録している。

問題は、インボイスを発行できるのは、消費税の申告をする課税事業者に限られること。国内の事業者は個人法人合わせて823万あるとされ、その6割が「免税事業者」とされる。とくに個人事業主の過半数が免税事業者だ。こうした事業者の発行する請求書や領収書では税額控除を受けられなくなるため、免税事業者との取引を縮小するのではないか、という見方が広がっている。経費処理するのに簡単な課税事業者の店を利用しよう、ということになるのではないかというわけだ。

インボイス制度を導入する財務省の狙いは、結局のところ、免税事業者を減らし、課税事業者に変えていくことにある。免税事業者も売り上げが減っては困るので、自ら課税事業者になって適格請求書(領収書)を発行できるようになろうという動きが出ている。そうなれば当然ながら、国に入る消費税の額は増えるわけで、増税策であることは間違いない。