来年以降、政権を揺さぶる火種になる
消費税「率」を引き上げれば、国民の注目が集まり大きな反発を生む。ところが課税業者を増やす今回のインボイス制度では、なかなか反発が起きにくい。実際にどれぐらい税負担が増えるのかが見えにくいからだ。だが実際に増税負担を被ることになるのはこれまで免税されてきた個人や零細事業者ということになるだろう。もちろん、様々な経過措置や特例措置も設けられているが、事業者の負担が増えることは間違いない。
例えば非課税事業者が課税事業者に転換しても、実際に消費税を納税することになるのはまだしばらく先だ。その負担増を実感し始めるのは来年以降になる。まだ、その全体的なインパクトを予想するのは難しいが、政権を揺さぶる火種になることは間違いない。しかも不満が爆発するのが来年となると、総裁選前に爆弾が破裂することになりかねない。
インボイス制度や請求書や領収書の電子保存など、デジタル化の進展で、徴税漏れは大きく減っていくことになる。加えて、課税業者が増えていけば間違いなく消費税収は増える。国にとってはデジタル化の恩恵は大きい。
「何のためにデジタル化を進めるのか」国民の怒りが蓄積
一方で、国民側からすれば、何のために国のデジタル化を進めるのか、という憤懣が蓄積しつつある。マイナンバーカードも「便利になる」と言って普及させる一方で、結局は個人の資産捕捉などに繋げて税収を増やすことが狙いだろう、ということになる。
そんな不満を解消するために、今回の内閣改造では当初、「デジタル行財政改革担当大臣」を新設し、デジタル化が行政コストの削減につながることをアピールするはずだった。総理直轄のデジタル行財政改革本部を設置することで、国が進めるデジタル化は行政改革のための手段なのだということを示す狙いだったのだ。菅義偉前首相がデジタル庁を創設した時に狙いとして示していたのは「縦割りの打破」。デジタル化が進めば行政コストが下がるというのがデジタル庁創設の謳い文句だったのだが、その理念を再度国民に訴えようとしたのだろう。
ところが蓋を開けてみれば、河野デジタル相が新設のデジタル行財政改革担当大臣を兼任することで終わり、斬新さはすっかり消えてしまった。
今後、マイナンバーのミス続発が止まらないまま、国民に不便さを押し付けることになる保険証の廃止に固執し続ければ、岸田内閣の支持率が再び低下を始めることになるかもしれない。さらに、それにインボイス制度への国民の憤懣が重なれば、岸田政権の足元を突き崩す「第2の爆弾」になるに違いない。