「デジタル行財政改革担当相」は河野大臣が兼任

岸田文雄首相は9月13日に内閣を改造した。焦点のひとつだった河野太郎デジタル相は留任、改造内閣の看板になるかと思われた「デジタル行財政改革担当相」は新設されたものの、河野大臣の兼任となった。

初閣議を終え、記念撮影する岸田文雄首相(前列中央)と閣僚ら
写真=時事通信フォト
初閣議を終え、記念撮影する岸田文雄首相(前列中央)と閣僚ら=2023年9月13日午後、首相官邸

当初は、マイナンバーカードへの健康保険証など情報の紐付けを巡る大混乱の責任を取らせてデジタル相を交代するのではないかと見られていた。結局、火中の栗を拾えるだけのデジタル化への知見を持った政治家が限られることから、今後さらなる炎上を抑えるためにも河野氏以外では難しいと判断したようだ。

さらに国民的な人気も高く、岸田氏にとっては潜在的に地位を脅かす存在である河野氏を、閣内で引き続き難題を抱えさせることで、抑え込もうという政治的な狙いもあるという解説も永田町では聞かれる。岸田首相は情報の紐付けミスの「総点検」を11月末までに行うよう指示しており、河野大臣に大きな重荷を背負わせている格好だ。

マイナンバーカードへの健康保険証の一体化については、野党のみならず与党内からも見直しを求める声が出ている。紐付けミスが相次いで発覚した6月以降、内閣支持率が大きく低下。NHKの世論調査では5月に46%だったものが、8月には発足以来最低に並ぶ33%にまで低下するなど、岸田内閣の足元が大きく揺らいだ背景にはマイナンバー問題があった。

父は「日本医師会のドン」という厚生労働相

首相周辺は、マイナカードと保険証を来年秋から一体化する方針を先送りする方向で動いたが、結局、8月4日の会見では一体化及び保険証の廃止の方針は堅持した。河野大臣と加藤勝信・厚生労働相(当時)の2人が先送りに強く反対したことが背景にあったとされる。今回の内閣改造で、日本医師会の推薦を受ける武見敬三氏が厚労相に就いたことで、この厚労省の姿勢がどう変わるのかが注目される。

武見氏はかつて日本医師会のドンと呼ばれた武見太郎氏の子息。今回の人事には「医師会が大臣になったようなもの」「あまりにも露骨」といった声が噴出しているが、保険証の廃止に慎重姿勢を取る医師会の声が今後の行政にどう反映していくことになるのか。武見大臣が医師会の説得に回って保険証廃止に突き進むのか、河野大臣との間でバトルを繰り広げることになるのか、大いに注目される。

11月末までに行われる総点検で、問題が解決するかどうかは首を傾げる。マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせたいわゆる「マイナ保険証」に他人の医療情報が紐付けされたミスの発覚件数は8月になっても増え続けている。8月8日段階で新たに1069件のミスが明らかになり、実際に他人の情報が閲覧されていた事例も5件確認された。累計の誤登録件数は8441件にのぼる。しかも、今後も誤登録の発見は増え続ける可能性があると報じられている。